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相続法が変わります!~その3:遺産分割前の預貯金払戻し制度~

 「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」が平成30年7月6日に成立し、同月13日に公布されました。そこで、相続分野で変更された主な点について、これからシリーズでご紹介していきます。

第3回目のテーマは、「遺産分割前の預貯金払戻し制度」です。

 

<「遺産分割前の預貯金払戻し」ってどのような制度?>

前回(第2回「遺産分割前の財産処分」)ご説明したとおり、亡くなった方の遺産は、亡くなった後から遺産分割手続きが終わるまでの間、原則として処分したり、誰かに譲ったりしてはいけません。

もっとも、特に亡くなった方の名義の「預貯金」について、入院費用、固定資産税、遺族である配偶者の当面の生活費などの支払いに充てるため、遺産分割手続きが終わるまでに臨時で払い戻す必要がある場面があります。

そこで、改正相続法では、亡くなった方の名義の「預貯金」について、一定の範囲内で払い戻しを受けられる制度を設けました。

 

<いくらまで払い戻しができるの?>

改正相続法では、相続開始時点の預貯金の3分の1を限度として、「共同相続人の法定相続分を乗じた額」を単独で行使することができると定めています。

たとえば、Aの預金300万円について、妻B、子CDがいる場合、妻Bが遺産分割前に払い戻しを受けることができるのは、いくらでしょうか。まず、預金が300万円ですから、払戻し限度額は3分の1の100万円です。そして、妻Bの法定相続分は2分の1ですから、100万円の2分の1、つまり50万円までであれば、遺産分割前に単独で払い戻すことができます。

なお、上記の条件に加え、法務省令で払戻し限度額を定めるとされており、現在の省令では150万円までと定められています。したがって、前述の家族の例で、仮に預金が3000万円遺っていた場合でも、妻Bが払戻しを受けることができる額は、500万円ではなく150万円までとなります。

 

<払戻しに必要な書類>

①被相続人が死亡した事実、②相続人の範囲、③払戻しを受ける方の法定相続分が分かる資料が必要です。一般的には、戸籍謄本等が考えられます。

 

<具体的相続分を超えた場合>

「遺産分割前の払戻し制度」は、あくまで遺産分割手続きが終わるまでの暫定的な払戻しであり、仮に遺産分割協議の結果、具体的な相続分を超えて預貯金を払い戻していたことが判明した場合には、超過分について、払戻しをした方が精算する義務を負います。

上記の例であれば、Bが50万円を払い戻したものの、遺産分割協議の結果、Bの取り分が30万円しかないと判明した場合、超過する20万円を返金しなければなりません。

 

<疑問やお悩みがあれば、専門家へご相談を>

今回ご紹介した制度以外にも、保全制度を利用して預貯金を仮に分割する方法が改正により整備されました。

遺産分割前の払戻しは、前回ご紹介した点も含めて、相続人の間で紛争の火種となりやすい問題です。疑問やお悩みがおありの方は、一度専門家へご相談されてはいかがでしょうか。

弁護士 石井 衆介