「第18回北九州部会・下関地区会合同研修」

2018年07月11日

研修室   平成30年6月1日、福岡県弁護士会「第18回北九州部会・下関地区会合同研修(通称:関門合宿)」に参加しました。

 例年この時期に行われる関門合宿は、北九州部会・下関地区会の弁護士が、今般話題となっている分野について、各分野の専門家を招いて研修を行うものです。

 今年度は、以下の研修が行われました。

 

 

1 講演:「高齢者への意思決定支援について」

        講師:今村浩司先生(西南女学院大学保険福祉学部福祉学科准教授)

2 講演:「相続税について~未分割財産に関わる諸問題~」

        講師:税理士 田口正章先生(九州北部税理士会)

3 講演:「インターネット上の風評対策~開示請求・削除請求の諸論点と実務~」

      講師:弁護士 壇俊光先生(大阪弁護士会)

 

1 「高齢者への意思決定支援について」

  弁護士の仕事でもある成年後見人や精神保健当番の関係から興味深い講演でした。

  以下、本講義で学んだことを一部ご紹介します。

人権保障の基本として、すべての国民が個人として尊重されることは憲法にあるとおりです(憲法13条)。また、意思決定をする権利は、人格権の一内容として尊重されなければいけません(最高裁平成12年2月29日判決)。

認知症や知的障害、精神障害等のために判断能力が不十分であるからといってその権利を奪われることがあってはいけません。法律上も「障害者の意思決定の支援に配慮しつつ」と明記されています(障害者基本法23条、障害者総合支援法42条、知的障害者福祉法15条の3)。

重度の障害がある人であっても必ず「意思」「意向」「考え」「気持ち」があり、自分で決めることができるという考えを前提として、意思決定の支援をする必要があります。

弁護士が成年後見人等の仕事をする際も、上記考えを意識しながら、依頼者に寄り添った支援を行うことが求められていると言えます。

 

2 「相続税について~未分割財産に関わる諸問題~」

  以下、本講義で学んだことを一部ご紹介します。

(1)遺産分割が未分割であっても相続税の申告は必要です。 原則として、被相続人の住所地を所轄する税務署に相続人の連名で申告をしなければいけません。期限内に申告・納税ができない場合には無申告加算税や延滞税が発生することがあります。

(2)相続税の申告をした後に遺産分割を行って相続税の更正請求をする必要がある場合には、遺産分割確定の日から4か月以内に更生請求をしなければいけません。当該更生請求は、国税通則法23条による法定期限から5年以内ではありません。

(3)相続税の申告期限までに遺産分割ができているか否かによって、「配偶者の税額軽減の特例」や「小規模宅地等の特例」などの制度を適用できるかが決まり、相続税額にも大きく影響します。

 

3 「インターネット上の風評対策~開示請求・削除請求の諸論点と実務~」

  以下、本講義で学んだことを一部ご紹介します。

  サーバ犯罪 等、インターネット上の風評等については次のような対策があります。

(1)損害賠償請求(不法行為等)

(2)人格権に基づく削除請求

(3)発信者情報開示請求権(プロバイダ責任制限法4条1項)

上記の削除請求や発信者情報開示請求をサーバの運営者等が任意に行ってくれず訴訟となることもあるでしょう。

 例えば、全世界で閲覧可能なインターネットニュース記事の中で名誉毀損をされた場合等、どこで訴えを起こすべきでしょうか。

民事訴訟法には、不法行為に関する訴えについては、不法行為があった地が日本国内にあるとき日本の裁判所に訴えを提起することができると規定します(民事訴訟法第3条の3八)。

そこで、上記名誉毀損があった場合の「不法行為があった地」がどこであるのかによって訴えを提起できる場所が決まります。 裁判例では、①日本語を用いているか、②日本国内の話題であるか、③読者が日本人であるか等の事情を考慮して判断されているようです(東京地裁平成28年6月20日判決、東京地裁平成28年11月30日判決)。

弁護士 藤 本  智 恵

 

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