ハンセン病家族訴訟 控訴断念による勝訴確定

2019年08月30日

仲間2019年6月28日、熊本地方裁判所は、ハンセン病病歴者の家族561名が2016年に提訴した「ハンセン病家族訴訟」について、原告勝訴の判決を言い渡しました。この判決は,ハンセン病病歴者だけでなく,その家族が受けてきた被害も,ハンセン病隔離政策によるものであるとして国の責任を認めた画期的な判決です。

判決は,国の誤った隔離政策により,「周囲のほぼ全員によるハンセン病患者及びその家族に対する偏見差別が出現する一種の社会構造(社会システム)が築き上げられた」と指摘したうえで,そのような「社会構造に基づき,大多数の国民らがハンセン病患者家族に対し,ハンセン病患者家族であるという理由で,忌避感や排除意識を有し,ハンセン病患者家族に対する差別を行い・・・,これにより,ハンセン病患者家族は深刻な差別被害を受けた」と断じました。ハンセン病病歴者のみならず,その家族も国による誤った隔離政策の被害者であると明確に認めました。

判決は,ハンセン病病歴者に対する平成13年熊本地裁判決から一歩踏み出し,らい予防法廃止後の,旧厚生大臣・厚生労働大臣,法務大臣,旧文部大臣・文部科学大臣の「偏見差別除去義務」を認めました。

判決は,偏見差別を受けるべき地位におかれた損害,および家族関係の形成が阻害された損害を認め,消滅時効が成立しているとの国の主張をしりぞけました。

他方,判決は,国の責任について昭和35年(沖縄では昭和47年)から平成13年末までに限定し,平成14年以降の責任を否定しました。この結果,20名が請求を棄却されました。また,包括一律請求という訴訟方式の限界から認容額が低額となるとともに,家族関係が歪められた被害を簡単に否定しているなど,指摘可能な問題点も含んでいました。それでも原告団は、家族に対する国の責任を認めた判決を評価し、控訴断念と政治的な全面解決を求めていくことにしました。

7月1日から控訴期限である12日まで、原告団は国会に詰めかけ、国の控訴断念を求める活動を展開しました。各政党ともに熱心に当事者の話を聞いていただき、厚生労働大臣、総理大臣との面談実現に向けて力添えをいただきました。多くの市民の皆様からも、控訴断念を求めるFAXやメールを官邸に送っていただきました。その結果、7月9日、総理大臣が控訴断念を表明、訴訟に参加しなかった人を含めて立法解決することを約束しました。

7月24日、原告団と総理大臣との面談が実現しました。安倍総理は、「内閣総理大臣として,政府を代表して心から深くお詫び申し上げます。」と述べ,深々と頭を下げ,原告一人一人と握手しながら言葉を交わしました。原告団は、「家族を隠し続けるという苦しみを想像してほしい。それはまさに筆舌に耐え難い苦難の人生だ。当事者である我々の声を生かしながら啓発と教育に国の総力をあげて取り組んでほしい。」「全ての家族原告が納得のいく差別のない解決を実現してほしい。」と訴えました。

ハンセン病問題は平成13年判決で終わったんじゃないの?とお考えの方もおられるかもしれません。しかし、もう一度考えてみましょう。ハンセン病問題は、ハンセン病関係者の問題ではありません。私たち市民がどんな社会を形成するかという問題です。国の間違った隔離政策の下とはいえ、ハンセン病患者をあぶり出して隔離し、家族を差別してきたのは、私たち市民一人一人です。ハンセン病に対する偏見・差別のない社会,ひいてはあらゆる差別・偏見を乗り越えた,真に豊かな社会の実現のため,もう一歩,二歩,わたしたちとともに足を進めていただきたいと思います。

弁護士  迫 田   学

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