生存権裁判不当判決

2009年12月20日

弁護士 田篭 亮博

 生活保護費の「老齢加算」が減額・廃止されたことに対して,その減額・廃止の処分の取り消しを求めていた裁判の判決が平成二十一年六月三日,福岡地方裁判所で下されました。その内容は,原告の請求を全く認めないという不当なものでした。

 この裁判は,いわゆる生存権裁判と言われており,全国八都市で提起されています。北九州では七十歳以上の高齢者三十九名が原告となり戦ってきました。

 生存権裁判とは,七十歳以上の生活保護受給者に支給されていた「老齢加算」一万七千九百三十円が,平成十六年から平成十八年まで三年をかけて徐々 に減らされ,平成十八年には全廃された事に対して,その減額の処分,廃止の処分が憲法二十五条の定める生存権を侵害するものではないかということを問う裁 判です。

 この老齢加算は,高齢になれば栄養のある食べ物を食べる必要があるし,また,高齢になれば体温調整ができにくくなるため暖房費等により費用がかか ること等を補うために設けられたものでした。高齢になれば,体が自由に動かなくなり,その分余計な費用がかかることは多くの方が経験上感じるところだと思 います。

 ところが,裁判所は,老齢加算を廃止した厚生労働大臣の判断は大臣の裁量の範囲内であり,また,原告らの生活も健康で文化的な生活水準を下回っているとは認められないとして老齢加算を廃止した処分は違憲・違法ではないと判断しました。

 裁判所の判断は,原告らの生活実態を正しく理解したものではありません。原告の方々は,毎日お風呂に入りたくても水道代,ガス代が支払えないため 週に二~三回しか入れません。しかも,お風呂の水も毎回換えることができず,一週間に一回程度しか変えることができない方がほとんどです。また,衣類など も自分で買うことはできませんから多くの方が貰い物を着用していますし,下着までも人からもらったものを使用せざるを得ない原告の方もいます。さらに,お 金がないために,冠婚葬祭にも出席できません。

 このように,お風呂も毎日入れない,下着も他人の使用したものを着けなくてはならない,親族・友人の冠婚葬祭へも出席できないような生活は,到底健康で文化的な生活とは言えないはずです。

 原告らとしては,裁判所のこの判断を受け入れることはできないとして平成二十一年六月十五日,全員が控訴しました。

 今後は福岡高等裁判所での審理が始まります。高等裁判所において一審の判決の問題点を追及し,なんとしても老齢加算の復活を勝ち取りたいと思っています。今後もご支援をよろしくお願いします。

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