2008年号外 航空自衛隊のイラク派遣は憲法違反

2008年05月28日

事務所ニュース

北九州第一法律事務所では,季刊誌「HOKKYU」を年に2回発行しております。
ここでは,その中から抜粋した記事をご紹介いたします。 
 

名古屋高等裁判所は,四月十七日にイラクへの航空自衛隊派遣が憲法違反であるとの判決を下しました。そして憲法が施行されて六十一年目の憲法記念日を迎える前日の五月二日に,歴史的・画期的な違憲判決が確定しました。

 平和憲法が裁判所で輝き始めました。

■自衛隊「参戦」の深刻な状況

 この判決のすばらしさの第一は,イラクの現状と自衛隊が「参戦」している深刻な事態をしっかりと認めたことです。逆に言えば,違憲判決を下さなければならないほど深刻な状況にあるといえます。

 判決文では,「裁判所の判断」の最初の項目を「本件派遣の違憲性について」として,イラクの深刻な事実の認定を行っています。

 米軍による ファルージャ掃討作戦について,米軍が「クラスター爆弾,並びに国際的に使用が禁止されているナパーム弾,マスタードガス及び神経ガス等の化学兵器を使用 して,大規模な掃討作戦が実施された。残虐兵器といわれる白リン弾が使用されたともいわれる」と米軍の実態を克明に指摘しています。

 イラク人の被 害についても,「人口の七分の一に当たる約四百万人が家を追われ,シリアには百五十万人ないし二百万人,ヨルダンには五十万人ないし七十五万人が難民とし て流れ,イラク国内の避難民は二百万人以上になる」「(英国の臨床医学誌ランセットは)イラク戦争開始後から平成十八年六月までの間のイラクにおける死者 が,六十五万人を超える旨考察を発表している」と認定しています。

■空自の活動は憲法違反

 第二の点は,イラクの現状や航空自衛隊の活動を丹念に検証し,これに基づいて,明確に憲法違反と認定したことです。

 航空自衛隊の バクダッドへの空輸活動について,「大多数は,武装した多国籍軍(主にアメリカ軍)の兵員である」とし,「自らも武力の行使を行ったと評価を受けざるを得 ない行動である」と認定しています。さらにバクダッドについては戦闘地域であると認定しました。そしてイラクの現状は「国際的な武力紛争が行われている」 とも認定しました。

 これらの事実 に基づいて,「現在イラクにおいて行われている航空自衛隊の空輸活動は,政府と同じ憲法解釈に立ち,イラク特措法を合憲とした場合であっても,武力行使を 禁止したイラク特措法二条二項,活動地域を非戦闘地域に限定した同条三項に違反し,かつ,憲法九条一項に違反する活動を含んでいることが認められる」と, 断じました。

 憲法九条一項は「武力による威嚇又は武力の行使は,国際紛争を解決する手段としては,永久にこれを放棄する」とうたっていますから,航空自衛隊のイラクでの活動を,憲法違反と認定したのです。

■平和的生存権を明確に

判決後の勝利報告集会

 判決のすばらしさの三点目は,憲法前文の「平和のうちに生存する権利」は「全ての基本的人権の基礎にあってその享有を可能ならしめる基底的権利である」とし,「憲法上の法的な権利」であり「具体的権利性」があるとした点です。

 「憲法九条に違反する」「戦争の遂行,武力の行使等や戦争の準備行為等」への「加担・協力の強制」などについては,裁判所に救済を求めることができるとしました。

 今後,基地被害や海外派兵なども,この平和的生存権の見地から裁判所で具体的に争える可能性が広がった画期的な判決です。

■判決を活かす運動を

 私たちにとって重要なのは,この判決を活かすことです。

 判決について 「傍論でしょ(福田首相)」「判決文は暇ができたら読みますよ(高村外相)」「そんなの関係ねぇ(田母神幕僚長)」と無視・軽視する発言が繰り返されてい ますが,これは衝撃の深さを示しています。憲法の最終的な判断は裁判所にあるという初歩的な原理さえ認めようとしない,まさに暴論です。

 一人でも多くの方にこの判決の意義を知ってもらい,今後の平和な世界を作り上げる先頭に日本が立てるような運動を繰り広げるためにどう活用するのか,しっかりと考えて行くことが求められています。

 名古屋高裁の憲法違反との判決は,到達点ではなく出発点です。「この憲法が国民に保障する自由及び権利は,国民の不断の努力によって,これを保持しなければならない(憲法十三条)」とあるように,判決を活かすも殺すも,私たちの「不断の努力」にかかっています。

 

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