2011年夏号 TPPて何だ?

2011年05月28日

国民に知らせないままで,TPPが結ばれようとしています

 TPPとは,環 太平洋経済連携協定と訳されていますが,要するに,“貿易は全て完全に自由にすべきだ”という国際的な約束です。“全て完全に自由”ということは,“例外 なく,関税などで区別や差別をしてはいけない,関税はゼロに”という制度です。「関税がゼロなら,輸入品が安くなり,良いではないか」と思われる方, チョット待ってください。本当に良いのでしょうか?

シンガポール, ニュージーランド,チリ,ブルネイの4カ国が結んだ“輸入の関税を例外なく撤廃する”協定を拡大しようと,オーストラリア,ペルー,ベトナム,米国,マ レーシアが加わって協議を続けているのがTPPです。協議では,輸入の関税だけでなく,「投資」や「金融サービス」の分野まで拡大されてきました。

あなたの仕事にも影響大

 TPPでは, 貿易は,物の輸出入だけでなく,サービス全てが対象となります。サービス貿易は,通信,金融,運送,建設,流通,観光・旅行,教育,健康,娯楽・文化,環 境など非常に多くの分野に及びます。もちろん,法律事務所も例外ではありません。こうした分野で“自由に”ですから,資格や検査・検定などで制限をするこ とが問題となります。TPPを結んだ国々の中での最低限の規制が全体の規制となります。

食品の安全が脅かされる

 「狂牛病が心 配だから検査をする」「遺伝子組み換え食品は危険だから禁止する」「農薬が心配だから残留農薬を検査する」・・こんなことはできなくなります。いま,アメ リカからの牛肉の輸入は,狂牛病の危険除去のため,生後20ヶ月以下の,しかも脊椎などの危険部位を除いたものしか認めておりません。「アメリカ国内では そんなことはやっていない。日本も同じように」と“自由”を求められれば,断ることができなくなります。

 日本の母親たちの粘り強い運動で強められてきた食品添加物の使用規制と表示,産地の表示なども撤廃されることになるでしょう。

農業がダメになり,飲料水の水源がなくなり洪水被害が激増する

 日 本人の命の綱の米,778%の米の輸入関税がなくなれば,米価は4分の1に。飲食店や弁当チェーン店,冷凍チャーハンなど安値競争で大部分が輸入米に。こ うした影響で90%が輸入米に置き換わり,米作農家は大部分がなくなり,東京都・大阪府・神奈川県・埼玉県・千葉県の総面積に匹敵する耕作放棄地が生まれ ます。

 日本の水田 は,全国各地に小さなダムが無数点在していることと同じであり,膨大な保水力を維持しています。この水田が減少すると,保水力が大きく減少し,洪水防止機 能や地下に浸透して水源となる機能が失われます。崖崩れや山崩れも発生し,国土の破壊も激増することになります。

 「GDP比1.5%の農業のために98.5%が犠牲になる」と言う人がいますが,農林水産業の価値を生産物の販売額だけで見るという非常に狭い見方であり,食糧の自給という国の安全保障や国土全体の保全という観点を欠落させた危険な考えです。

医療は儲けが最優先の株式会社に

 いま,フィリピンやインドネシアから看護師を受け入れていますが,まだまだ厳しい条件があります。その条件も大きく下げ,医師・看護師・介護士不足の解消を,簡単に海外に求めようとしています。

 日本には,原 則,保険証一枚で,“いつでも,どこでも,どんな時でも”経済的な心配をせずに同じ水準の医療を受けることができます。しかし,リストラや低収入で保険料 が払えず,無保険者が増えています。その一方で,アリコやアフラックなど,外資系の保険会社が急増し,“高額医療も保険でカバーできる”などと宣伝して顧 客を急増させています。これも,アメリカから金融緩和を求められた小泉内閣が行った社会保障の連続改悪の結果です。

 その仕上げと して,「アメリカには公的な医療保険制度はない。日本の公的医療保険制度は,民間の医療保険制度を圧迫しているからもっと民間に自由にさせるべきだ」と言 われたら,「いや!」と言えないのがTPPです。アメリカ映画「シッコ」が示す医療の実態,金持ちは超高度医療で助かるが貧乏人は命を守れない,命をお金 でやりとりする恐ろしい社会となるでしょう。病院が株式会社となり,儲けを最優先する,儲からない医療から撤退,こんな医療で健康や命が守れるのでしょう か。

労働者の使い捨てがいっそう激しくなる

 「働く自由度を広げるために」との美名のもとに,契約社員や派遣労働が全ての部門で自由化されました。その結果,大企業は空前の利益をあげる一方で,労働者は年収200万円以下の人が4人に1人という深刻な状況となっています。

 TPPは「労 働力の移動」も自由化の対象です。所得水準がはるかに低いアジア地域との間で「労働力の移動」が自由化されれば,日本の賃金水準は歯止めなく低下するで しょう。現に,経団連(日本経済団体連合会)の米倉会長は昨年11月,「(TPP参加を機に)日本に忠誠を誓う外国からの移住者をどんどん奨励すべきだ」 と述べています。

 今でも国内の遠くへの転勤が強要されていますが,TPPでは全世界が転勤・出向の対象となり,しかも政情不安な諸外国が主要な対象となり,断れば退職を強要さることになりかねません。

ことは,アメリカの要求から始まった

 これまでも, アメリカは,日米安保条約の経済条項を楯に,牛肉やオレンジの輸入自由化を“経済協力”の名で押しつけてきました。さらに90年代に入ると「「日米構造協 議」などを通じて,毎年,金融,労働,医療,建設,運輸などあらゆる分野にわたる細かな対日要求が,米政府の「年次改革要望書」として出されました。要望 書とは名ばかり,一日も早く実施を迫る内政干渉でした。

 この結果が大型店の出店規制緩和,保険の自由化,郵政の民営化,国家財政を破綻させる元凶となったムダな大型公共事業です。

 TPPは,規 制は最小限,できればゼロに,儲けはどこでも自由に最大限に,儲からなければ自由に直ちに撤退でき,規制をして損害を与えた政府は損害賠償をしなければな らない,という各国の財界にとって理想的なものなのです。日本の財界が,米を差し出し,TPPを強力に後押ししているのもこのためです。

 TPPで,日本はアメリカの「51番目の州」になり下がり,米政府言いなりの太平洋の片隅の貧困国となるでしょう。

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