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Q&A 時効~債務の承認~

質問:先日、20年以上前に10万円を借りて、一度も返済をしたことがなかった金融業者からいきなり返済を求める通知書が届きました。その通知書を放置していたら、支払督促を申立てられてしまいました。損害金や利息の額が大きく、すぐに支払うことができる額ではなかったため、異議申立書に分割支払いの希望を記載してしまいした。しかし、よく考えると、分割でも支払うことができる額ではありません。分割支払いの希望を記載したため分割で支払っていくほかないのでしょうか。

 

回答:

1 時効が完成している(時効の期間が経過している)場合、金融機関に対して「時効を援用(主張)する」旨を通知すれば、支払をする必要はありません。但し、債務の「承認」をした場合、時効は中断してしまいます(民法147条3号、当事務所HPの平成30年7月26日の記事を参照)。

債務の「承認」とは、消滅時効が完成したことによって利益を受けるべき者が、債権が存在することについて権利者に対して表示をすることを言います。例えば、債務者が債務の一部を弁済する場合、債務者弁済の猶予を懇請する場合等が時効の「承認」にあたるとされています。なお、債務者が債務の存否を調査することは債務の「承認」にあたりません。

また、時効完成(時効期間の経過)後に債務の承認をした場合、時効中断事由における債務の「承認」にはあたりませんが、信義則上、消滅時効を主張することができなくなります(最高裁昭和45年5月21日判決、当事務所HPの平成30年8月17日の記事を参照)。

2 本件では、20年以上も前の借金であり、一度も返済を行っていないということから、時効が完成している(時効の期間が経過している)場合にあたる可能性が高いと考えられます(当事務所HPの平成30年7月26日の記事を参照)。

また、支払督促異議申立てによる本訴への移行の手続過程において、裁判所に対して具体的金額を示して和解の意思があることを表示したことをもって、直ちに、債務の承認をしたものとして、時効の援用(主張)が信義則上できなくなるわけではありません(新潟簡裁平成28年6月29日判決参照)。

加えて、支払い督促が確定するまでに時効が完成していた(時効の期間が経過している)場合には、支払い督促が確定したとしても、信義則に反する事情がない限り、時効を援用することができると考えられます(民法174条の2参照)。

以上から、本件の場合にも、金融機関に対して「時効を援用(主張)する」旨を通知すれば、支払を行う必要がなくなる可能性があります。

3 本件の場合、まずは取引履歴を開示や時効の援用をする必要があるでしょう。同じような問題にお困りの方は、北九州第一法律事務所にご相談下さい。

 

弁護士 藤本 智恵

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