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遺言と登記の関係について

1 事件紹介

⑴ 私が数年前に担当した事件です。

⑵ 被相続人母Aが亡くなり,Aの相続人は長女である依頼者Xと弟Y1の2名でした。Aの遺産には,預貯金のほか,自宅不動産がありました。

Aは,XにAの遺産の全てを相続させる旨の遺言を作成していました。

 

 

しかし,Xが遺言に基づき不動産の所有権移転登記を行う前に,Y1に金銭を貸し付けていたY2が,Y1に代わって相続登記を行い,Y1の持分1/2を差し押えました。

⑶ この事件では,遺言により不動産を取得したが登記未了のXと,登記を先に行ったY2のどちらが優先するのかが問題となります。

この問題について,最高裁判例(最二小判平成14・6・10判時1791号59頁)は,相続させる旨の遺言による権利の承継は,登記なくして第三者に対抗することができると判断しています。そこで,この事件でも,裁判の結果,Xによる不動産取得が優先することが認められ,無事に不動産をXの単独名義とすることができました。

 

2 相続法改正の影響

しかし,2019年7月1日施行の相続法改正により,上記のような事例は,結論が変わることになりました。

改正後の新民法899条の2は,法定相続分を超える権利の取得は,登記などの対抗要件を備えなければ,第三者に対抗することができないとしています。これは,遺言の有無や内容を知り得ない相続債権者・債務者等の利益や第三者の取引の安全を確保するためです。

つまり,上記事例では,遺言があっても,先に登記を行ったY2が優先し,差押えの効力が認められることになります。

したがって今後は,亡くなった方に遺言がある場合,遺言に基づく登記を速やかに行う必要があると言えそうです。

 

弁護士 今里 晋也

 

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