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コークス肺がん訴訟

1 事件のあらまし

北九州市に住むYさんは、昭和32年に新日本製鐵に入社し、以後昭和53年まで約21年間、八幡東区の洞岡(くきおか)コークス工場で勤務してきました。

コークス工場とは、石炭を炉内で蒸し焼きにして不純物を取り除き、高炉燃料であるコークスを製造する工場です。

ところが、コークス製造過程では、石炭燃焼時に発生したタールを含む蒸気がコークス炉から大量に漏れ出し、Yさんたち労働者は日常的にタール蒸気を浴びていました。

その結果、Yさんは、平成9年に退職後、平成20年に肺がんを発症し、懸命の闘病を続けましたが、平成21年に他界されたのです。

2 安全配慮義務違反

使用者は、労働者の生命や身体が危険にさらされないように保護すべき義務(安全配慮義務)を負っています。

ところで、八幡製鉄病院の医師たちは、昭和初頭から新日鐵労働者における肺がんの職業的発生について研究を行い、既に昭和32年までにタールと肺がん発症との関連性は指摘されていました。

つまり、新日鐵は、コークス炉から漏れ出したタール蒸気を浴び続ければ、将来肺がん発症等の危険性があることを十分認識していたのです。

したがって新日鐵は、労働者がタール蒸気にさらされないために、タール蒸気の発生を抑える設備の設置、マスクの配布、労働時間の短縮などの対策を取る義務がありました。

しかし新日鐵は、以上の対策を取ることなく漫然とYさんらをタール蒸気にさらし続けており、安全配慮義務違反は明らかです。

なお、Yさんの肺がんについては、平成21年に労災認定がなされました。すなわち、Yさんの肺がんがコークス工場での業務に起因する病気であることは、既に認められています。

3 本訴訟の意義

以上のとおり、新日鐵は、安全配慮義務に違反してYさんをタール蒸気にさらし続け、Yさんは肺がんを発症し死亡しました。

そこで、Yさんのご遺族は、Yさんの被った損害の賠償を求めて、本訴訟を提起しました。

コークス工場労働者の健康被害に対する企業責任を追及する訴訟は全国でも例がなく、本訴訟により、全国の被害者に救済の道を開くことを目指していきます。

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