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求人詐欺・試用期間中のトラブル

求人詐欺について

就職をして収入手段を得ることは生活の安定を図るうえで大切なことです。しかし,就職後,予想に反するような労働条件や待遇に直面し,困ったことはありませんか。

近年,労働関連法令違反が体質化する企業のことを「ブラック企業」,ブラック企業が行う求人を「ブラック求人」と表現することがあります。

 

ブラック求人を防止するため,2020年3月から一定の労働関係法令違反のあった求人者について,ハローワーク(公共職業安定所)と職業紹介事業者は,一定の場合に求人を受理しないことができることになりました。これは2016年3月から新卒者のみを対象として導入されていた取扱いを,職業安定法の改正により新卒者以外の求人一般にも拡大したものです。

 

この法改正により,過去1年間に2回以上,同一の法規定違反について是正指導を受けている求人者や,公表されるような法令違反があった求人者については,一定期間,求人を不受理扱いとすることができるようになりました。

 

もっとも,不受理の対象は特に悪質なケースを念頭に置いているといえ,軽微な法令違反をくり返している,あるいは求職者が問題化することをあきらめ,ブラック対質が表面化していない企業の場合には制限をかいくぐって求人に至ることも考えられます。

 

実際のブラック求人の例としては,事務職採用の求人であるのに工場作業を求める,面接に来た男性の求職者に対して実際は女性の求人を求めているとして別の職種を強要するなどがあります。

したがって,採用時には,特に面接の際に求人票と異なる説明を受けた場合には必ず指摘し,抽象的ないし不明瞭な内容については詳しく説明を求め,回答内容をメモにすることが大切です。

また,就業規則も早い段階で見せてもらい,できればコピーを取っておくと,後日問題が起きた場合の検討・対処がスムーズになります。

 

試用期間中のトラブル

採用後,試用期間中に上述のような問題から退職意思を示すと,損害賠償請求を示唆されるケースもあります。

しかし,退職届が法律上認められる場合に,損害賠償を受ける理由はありません。雇用契約が「期間の定めのない契約」である場合,2週間後に退職する内容の退職届を会社へ提出しましょう。

他方で,雇用契約が「期間の定めがある契約」である場合,退職することについて「やむを得ない事由」があれば直ちに退職することができます(民法628条)。一般的には,「やむを得ない事由」がないのに突然退職すると,使用者から損害賠償を受ける可能性があります。

どのような場合に「やむを得ない事由」といえるかは,裁判例上も明確ではありませんが,直ちに退職することを認めないと労働者にとって酷であるといえる事情の有無で判断すべきように考えます。例えば,以下のような事情がある場合には,「やむを得ない事由」が認められやすいでしょう。

・当初の求人票と異なる業務内容に従事していること
・労働時間を雇用主が把握しようとしていないこと
・パワハラめいた発言が飛び交う職場であること

また,試用期間中に上述のような問題点を指摘すると,本採用を拒否される場合があります。この点に関しては,裁判例で,「企業者が,採用決定後における調査の結果により,または試用中の勤務状態等により,当初知ることができず,また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合において,そのような事実に照らしその者を引き続き当該企業に雇用しておくのが適当でないと判断することが,解約権留保の趣旨・目的に徴して,客観的に相当であると認められる場合」にのみ拒否が許されるとされています(三菱樹脂事件)。

つまり雇用主側の問題で,本採用拒否することは許されないのが原則であり,拒否を受けた場合は雇用主に対して損害賠償請求が可能なのです。

 

最後に

これらの問題には労働法関連の知識や類似の裁判例に基づいて慎重に対処すべき場合が少なくありません。問題に気付いたときにはお早めに弁護士へご相談することをお勧めします。