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放置車両にご用心!

空き地や店舗駐車場などで稀に見かける放置車両、あなたの周りにもありませんか。今回は、私が実際に担当したHさんの事例を参考に、放置車両に関する法的対応についてご紹介します。

 

1 所有者に無断で撤去・処分して良いの?

Hさんは、自己名義で借りている駐車場を職場の元同僚に貸してあげました。ところが間もなく、同僚は退職し、自動車を放置したまま行方が分からなくなってしまいました。このような場合、放置車両を所有者に無断で撤去・処分して良いのでしょうか。

民法では、たとえ自分に法律上の権利があるとしても、自分の力で権利を実現することは認められていません(難しい言葉で「自力救済の禁止」といいます。)。それにもかかわらず、所有者に無断で撤去・処分してしまった場合、損害賠償を求められたり、刑事責任を問われたりする可能性も否定できません。安易な自力救済は控えましょう。

 

2 まずは所有者を確認

⑴ 普通乗用自動車の場合

運輸局で「登録事項等証明書」を取得すれば、所有者の氏名・住所等を確認することができます。取得の際、放置車両の現状確認を求められることがありますので、あらかじめ車体やナンバープレートの写真を撮るなど資料を残しておきましょう。

⑵ 軽自動車の場合

登録制度がないため、軽自動車検査協会から軽自動車検査記録簿の写しの送付を受けるなどして、所有者の氏名・住所等を確認します。

 

3 所有者へ連絡

内容証明郵便等を用いて、所有者に対し、放置車両の撤去・処分を求めます。所有者からの応答が得られれば、比較的早く解決出来るかも知れません。

なお、自動車ローンが組まれていて、ローン会社が所有者とされている場合には、当該ローン会社にも連絡します。

 

4 訴訟による解決

所有者へ連絡しても応答がない場合には、不動産明渡訴訟などによって判決を取得し、強制執行により放置車両の撤去・処分を実現しなければなりません。

Hさんの事案でも、元同僚から何の応答も得られなかったため、不動産明渡しと賃料の支払いを求めて訴訟を提起し、勝訴判決を得た上で強制執行を行いました。

今回は、車両がかなり古く価値無しと判断されたため廃棄処分となりましたが、比較的新しい車両の場合には売却手続きになることもあります。

 

5 おわりに

このように、車両を放置されてしまった場合、放置車両の撤去・処分には多大な労力と多額の費用が必要となります。本来、これらの費用は相手に対して請求できるものですが、車両を放置するような方の場合、財産を有していないことや居場所が分からないことも多く、費用はこちらが負担する場合が多いと思われます。Hさんの場合も、合計30万円以上の費用負担を余儀なくされました。

赤の他人に車両を放置されないため対策を講じることはもちろんですが、知人であっても気軽に利用させないよう十分注意してください。

 

弁護士 石井 衆介

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