遺言に記載されていない遺産の分割について

2018年01月22日

遺言書1 遺言書において,遺産の一部のみを特定相続人に相続させる旨が記載され,残る遺産について記載がない場合があります。この場合,残る遺産の分割については,どのように考えれば良いのでしょうか。

 実はこの問題は,弁護士であっても勘違いしがちな問題なのです。

 

2 次のような事例を元に考えてみます。

(事例)

 夫Aが死亡し,妻B,子C,子Dが相続人となりました。

 夫Aの遺産としては,①不動産(評価額1000万円)と,②預金(1000万円)が存在します。

 この場合,各人の法定相続分は,以下のとおりとなります。

  妻B 遺産総額2000万円×法定相続分2分の1 =1000万円

  子C 遺産総額2000万円×法定相続分4分の1 =500万円

  子D 遺産総額2000万円×法定相続分4分の1 =500万円

 ただし,本件では,夫Aが,「Cに預金全部を相続させる」との遺言書を残していたとします。不動産の分割については,遺言書に記載がありません。

(設例)

上記のような事例において,正しいのはどちらでしょうか。

① 遺言書に不動産について記載はないから,不動産は法定相続分に従って分割される。つまり,Cは不動産について4分の1の相続分がある。

② Cは預貯金で既に自己の相続分を超過した遺産を取得しているのだから,不動産について分割を受ける相続分はない。

 

3 正解は,Cは不動産について分割を受ける相続分はない(片岡武ほか「家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務(第3版)」(日本加除出版・2017年)482頁以下)。

 上記のような遺言は,特定の遺産を特定相続人に優先的に取得させることを意図したものであり,超過分の調整を予定していないとみるのが合理的なので,この遺言は相続分の指定(民法902条)を伴っており,特定相続人は残余財産の分割には預かれない,とされています。

①の「遺言書に記載のない遺産については法定相続分どおり」という見解も,筋が通っているように感じられるところです。しかし,遺言書により法定相続分を超過する財産を取得できる場合は,これがあてはまらないことになるため,注意が必要ですね。

なお,事例と異なり,遺言書により取得する財産の額が法定相続分に達しない場合には,不足部分については残余財産の分割を受ける権利があると考えられます。

以上

弁護士 今里 晋也

Comments are closed.