【事件報告】 ツクイマタハラ訴訟

2016年05月02日

マタハラ妊娠した労働者に対する上司の配慮を欠く言動や、妊娠後の業務軽減が認められなかったことがマタニティハラスメントであるとして会社と上司を訴えていた裁判で、会社と上司の責任を認める判決が出ましたので、報告します。

 

(事件の概要)

原告は、通所介護施設(デイサービスセンター)の介護職の職員です。原告は、介護の仕事が楽しく、やりがいを感じながら毎日働いていました。

2013年7月ころ、妊娠がわかりました。原告も夫も妊娠を大変喜びましたが、同時に今後介護の仕事が続けられるか不安も感じました。そのため、医師に相談し、やるべきではない業務などを聞いたうえで、上司と面談することになりました。

同年9月、上司(施設の所長)と面談を実施しましたが、上司は面談の場で、できない業務が多いことに嫌悪を示し、「妊婦として扱うつもりないんですよ」、「万が一何かあっても自分は働きますちゅう覚悟があるのか」、「一生懸命しない限り更新はない」などと発言しました。原告は、この面談を受けて、今までかそれ以上に働かなければ契約を更新することができないのだと感じ、その日以降上司に対し業務軽減を求めることができなくなってしまいました。

 そして、だんだんとお腹が大きくなっていく体で、利用者さんの送迎をしたり、車いすを運んだり、入浴介助をしたりといった重労働を12月まで続けました。送迎中や入浴介助後に気分が悪くなることもありましたが、そのことを上司に告げれば一生懸命していないと思われると思い、相談もできず、無理をして働き続けました。その結果、12月には原告は切迫早産と診断されるに至りました。原告はその診断を受けて、夫とともに会社に業務軽減を申し出て、ようやく送迎や入浴を担当しないなど、業務が軽減されることになりました。しかし、会社は、2014年1月、原告が希望していないにも関わらず、勤務時間を1日4時間に変更して原告の労働時間を極端に減らし、その結果給与も大幅に減額されるなど、不誠実な対応を続けました。

原告は、9月の面談以降、体力的にきつくても業務軽減を申し出ることができず、また上司から無視されるなどが続き、妊娠した自分を責めたり、流産するのではないか、ちゃんと子どもを産めるのか育てていけるのかと不安に感じ、精神的に追い詰められていき、1月にはうつ病の診断も受けました。2月には、無事に子どもを出産しましたが、その後もうつ状態は続きました。

 原告は、地域一般労働組合に加入し、「妊娠出産しても働き続ける権利があることを示したい」という思いで会社と団体交渉を続けましたが、話し合いがつかず、2014年8月、上司と会社を被告として訴えを提起しました。

 

(判決の内容、意義)

 被告は、訴訟の中で、上司の発言は業務指導の一環だとか、業務軽減をしなかったことについては、上司から原告に折を見て様子を聞いていたが原告が曖昧にしか返答しなかった、業務軽減自体していたなどと主張していました。

 判決では、被告の言い分は認められませんでした。

上司の発言については、『妊娠していることについての業務軽減等の要望をすることは許されないとの認識を与えかねないもので、相当性を欠き、・・・妊産婦労働者の人格権を害するものと言わざるを得ない。』とされました。

また、業務軽減等の措置を講じなかった点については、『原告に対して負う職場環境を整え、妊婦であった原告の健康に配慮する義務に違反したものと言える。』とされました。

 妊産婦労働者の人格権および妊産婦労働者の健康配慮義務を明確に認め、それに反する場合は損害賠償の対象になると認めたことは、実務に対する影響も大きいと思います。

 原告の「妊娠しても働き続けることができることを示したい」という当初からの思いを実現するため、本判決をもとに、今後会社に対し、職場環境の整備を求めて交渉する予定です。

本件の会社のように、「妊娠したら女性は仕事を辞める」といった会社もまだまだ多い中で、本判決を契機として、妊娠しても女性が安心して働くことが当たり前になるよう、今後も声を上げ続けていく必要があります。

 

弁護士 諸隈 美波

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