よくある誤解~「時効の中断」について

2018年07月26日

お金質問:

 金融機関のA社から,10年ほど前に借金をしました。その後仕事を辞めてしまい,ここ5年以上は全く返済ができていませんが,A社からは定期的に請求書(督促状)が届いていました。

 最近,A社から,○月○日までに支払をしなければ法的手続に入るという通知書が届きました。私はA社に返済をしなければならないのでしょうか。

 

 

回答:

1.消滅時効の制度について

 消費者金融からの借金については,原則として,最後に返済を行った日(*1)から5年を経過していれば,消滅時効が完成します。

 時効が完成している場合,金融機関に対して「時効を援用(主張)する」旨を通知すれば,支払をする必要はありません。

 

2.時効の中断について

 この点についてよくある誤解は,「請求書(督促状)により請求をしている限り,時効は中断される(完成しない)」というものです。実際,「借金整理専門サイト」などと謳っているWEBサイトの中にも,このような誤解に基づく記載がされていることがあります。

 確かに,民法には,次のような規定があります。

    民法第147条(時効の中断事由)

    時効は,次に掲げる事由によって中断する。

    一 請求

    二三(略)

 これを見ると,金融機関が請求をすれば,時効は中断されるようにも見えます。

 しかし,裁判外で請求書などを送付して行う借金返済の催促は,法的には「催告」といって,時効中断事由となる請求とは別物です。

 催告については,次のとおり定められています。

    民法第153条(催告)

 催告は,六箇月以内に,裁判上の請求,支払督促の申立て,…(中略)をしなければ,時効の中断の効力を生じない。

 つまり,単に請求書や督促状を送付するだけでは時効は中断せず,そこから6か月以内に裁判などを行わなければ,時効中断の効果は生じないとされているのです。

 したがって,ご質問の事例では,裁判で判決などが出ている場合は別ですが,そうでない場合には,消滅時効が完成している可能性が高いでしょう。

 

3.民法改正について

 なお,2020年4月1日に施行される民法の一部改正(債権法改正)では,①時効期間・起算点のほか,②時効障害(旧:中断)事由についても,大幅な変更がなされます。

 経過措置により,①施行日前に債権が生じた場合(=施行日前に契約がされた場合)には旧法の時効期間が適用されますが,この場合でも,②施行日以降に時効障害事由が生じた場合は,時効障害事由については新法の規定が適用されるなど,複雑な適用関係となるため,注意が必要です。

 

(*1)正確には,定められた返済日に返済ができず,契約条項に基づき「期限の利益を喪失した日」が,全ての債務についての時効の起算点になります。これは通常,最後に借入や返済を行った日と近接するため,便宜的にそのように説明をすることがあります。

弁護士 今里 晋也

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