相続について~預貯金の払戻し~

2018年05月09日

預金通帳従来,可分債権にあたる預貯金は,相続の開始とともに法定相続分に応じて分割され,各相続人に移転するとされていました。

しかし,普通預金債権,通常預金債権及び定期預金債権は,いずれも,相続開始と同時に相続分に応じて分割されることなく遺産分割の対象になるものと解するのが相当と,判例変更されました(平成28年12月19日決定)。

そのため,従前に増して,金融機関の多くが,相続人間のトラブルに巻き込まれることをおそれ,遺産分割前の預金債権の払戻しに応じない可能性が高くなりました。

とはいえ,相続人にとって葬儀費用等の資金が支給必要になる場合もあります。以前から,預金の払戻しにおける具体的な対応は,各金融機関によって異なっています。金融機関の多くは,遺言書や遺産分割協議書がない場合には,相続人全員の同意書がなければ,各相続人による個別の請求に応じていませんが,交渉次第では対応をしてもらえる金融機関もあります。そこで,預金の払戻しの手続の際は,金融機関の担当者と事前に確認・交渉したうえで,相続人間で相談することをおすすめします。

以下,遺言がなく,遺産分割協議がなされていない場合の実務上一般的に金融機関から要求される手続を紹介します。

 

1 共同相続人全員の同意がある場合

以下は,共同相続人全員の同意がある場合,預金の払戻しにおいて,相続人が,金融機関に提出する書類等の一例です。

EX.①手続依頼書(相続人全員の署名及び実印の押印のあるもの)②相続人全員の印鑑登録証明書③相続人の戸籍謄本及び被相続人の除籍謄本(出生から死亡まで,相続人の範囲を確認しうるもの)④被相続人の預貯金ないし預金証書,キャッシュカード⑤払戻しを受ける者の実印(名義変更の場合は取引印も)

2 相続人の一部の者による場合

金融機関の多くは,法定相続分の範囲内であっても,相続人の一部の者による払戻し請求に応じていません。原則として前述の相続人全員の同意による払戻し請求の方法をとることになります。ただし,相続人は支払命令や判決により,法定相続分の範囲で金融機関に対する債務名義を取得してこれを提示することで実質的に預貯金の払戻しを受けることはできます。

前記の手続が原則的なものにはなりますが,至急払戻しが必要な場合等には,金融機関の担当者に事情を説明し,粘り強く交渉することで,相続人の一部の者が欠けていても,残り全ての相続人による依頼書によって払戻しを受けることができる可能性もあります。

弁護士 藤本 智恵

 

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