相続実務における預金の取扱について

2016年07月26日

通帳1 はじめに

 人が亡くなったとき,遺産として預金が残されていることは多いと思います。ここでは,相続の実務において預金がどのように取り扱われるかについてご紹介します。

 

2 現在の実務

 金融機関が口座名義人の死亡を知ると,預金口座は凍結されて出金できない状態となります。そこで,相続人全員が署名押印をした書面(金融機関ごとに「相続届」等の名称の書式があります)に印鑑証明書や戸籍謄本等を添付して提出し,相続手続を行います。 では,相続人間に争いがあり,相続届の作成に協力できない場合はどうなるのでしょうか。

 現在の最高裁判所の判例では,①預金は相続分に応じて当然に分割される(そのため原則として遺産分割の対象にはならない),②ただし相続人全員の合意があれば遺産分割の対象にすることができるとされています。

 ①の相続分に応じて当然に分割されるという意味は,遺産分割をするまでもなく,各相続人が金融機関に対して相続分に応じた預金の払戻を請求できるということです。しかし,現実の銀行実務では,金融機関は,相続人間のトラブルに巻き込まれることを嫌って,各相続人からの相続分に応じた払戻請求には容易に応じません。そこで,金融機関を相手に預金の払戻を求める裁判を起こすこともあります。

 実務上は,②のように,相続人全員の合意のもと,遺産分割協議の中で分割方法を決めることも多くあります。遺産分割協議書において預金の帰属を決めておけば,その遺産分割協議書を用いて預金の相続手続を行うことができます。

 

3 今後の実務

 ただし,既に報道されているとおり,上記の最高裁判例は,近く変更される可能性があります。現在の銀行実務をふまえて,預金は原則として遺産分割の対象になると判断される可能性が高いと思われます。

 判例変更がされた場合の実務上の影響として,相続税の支払に関する懸念は無視できません。相続税の納付期限は相続開始を知った日の翌日から10か月以内ですが,このときまでに遺産分割により預金の帰属が決定していない場合,相続税の支払原資を確保できないおそれがあります。今後は,遺言や生命保険契約等の活用により,相続人が早期に現金を取得できるような手立てを講じておく必要があるかもしれません。

以 上

弁護士 今里 晋也

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