辞職について

2019年04月11日

退職届1 相談内容

 X社に無期雇用で勤務するAさんは、数年前から転職を考えていました。タイミング良くZ社からの誘いを受けたため、半年後に同社で働くことになりました。Aさんは、上司に半年後には退職したい旨を伝えたところ、「退職は認めない、退職届も受け取らない」と言われています。Aさんは、X社を辞めることはできるのでしょうか。

 

 

2 辞職の自由

(1)はじめに

 辞職とは、一般的にも使われている言葉ではありますが、労働者による労働契約の解約(退職)を言います。

 使用者による一方的な労働契約の解約は、労働契約法、労働基準法の制約を受けますが、労働者による辞職は、原則として自由であり、使用者の承諾を必要としません。これは、職業選択の自由や奴隷的拘束を禁じた憲法上の帰結でもあります。

 但し、辞職をしようとする労働者は、労働契約の内容によって次のとおり注意を要します。

(2)期間の定めのない労働契約について

 期間を定めずにした労働契約において、労働者が辞職するためには、合理的な理由は必要ありませんが、原則として2週間前に予告をすることが必要です(民法627条1項)。なお、2週間の予告期間を置かずに突然に退職をして、会社に損害を与えた場合には損害賠償が認められる場合もあります(ケインズインターナショナル事件―東京地裁平成4年9月30日判決)。

(3)期間の定めのある労働契約について

 期間を定めた労働契約の場合、「やむを得ない事由」があるときにのみ直ちに解約ができます。その事由が当事者一方の故意・過失によって生じた損害については賠償責任を負う可能性があります(民法628条)。

(4)まとめ

 辞職の意思表示は、使用者に到達した時点で解約告知としての効力を生じます。

 以上より、Aさんは、(職業安定法に違反しない限り)X社を辞職し、Z社に転職をすることができるでしょう。また、Aさんは、退職についての証明書を請求し、X社から交付を受けることができます(労働基準法22条1項)。

 

3 さいごに

 社会の中で実際に生じる紛争は、今回ご紹介した事案よりも、より複雑なものばかりです。労働に関する悩みを抱えられている方は、気軽に弁護士等の専門家にご相談ください。

弁護士 藤本 智恵

(ぱーとなー原稿 「暮らしの法律相談」より転載)

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