「結婚の自由をすべての人に」訴訟

2019年09月20日

1908 藤本弁 結婚の自由をすべての人に

 

1 2019年2月14日,日本で生活する同性カップル13組が,東京,大阪,札幌,名古屋で,同性カップルが法律婚できないのは憲法違反だとして国を提訴しました。

上記訴訟では,同性婚が認められていない現状は憲法が保障している「婚姻の自由」を侵害し,「法の下の平等」に反しているにもかかわらず,同性カップルが結婚できるように法律を国会がいつまでも作らないのは(立法不作為による)違法であるとして,それによって原告らに生じた精神的損害について国に対し賠償を求めています。

 

2 憲法24条について

憲法24条には,「婚姻は,両性の合意のみに基いて成立し,」と規定されていることから,憲法は同性婚を禁止していると説明されることがあります。安倍総理は,現行憲法の下で「同性カップルに婚姻の成立を認めることは想定されておりません。」との見解を示していますが,同条の保護範囲については解釈も分かれるところではあります。

しかし,憲法24条により保護されるかという問題と,憲法が同性婚を禁止しているかという問題は別の問題です。同条の立法趣旨は,個人より「家」が大切にされていた明治憲法下の男尊女卑思想に貫かれた「家」制度を解体し,新しい近代的な家族制度を構築することをであり,同条1項は,戸主や他者の同意がなくても両当事者の合意のみで結婚できることを定めたものとされています。当該立法趣旨や,他の条文において同性婚を禁止する条文がないこと,憲法上個人の尊重や幸福追求権が保障されていることなどから,同性婚を認めることは憲法に違反しないという見解が通説となっています。また,同性婚を認めていないことについては,合理的根拠がない限り平等原則(憲法14条)違反であるとの指摘もあります。

 

3 性の多様性を社会制度に反映する動き

当事者が愛し合うことは自由なのだから,結婚をしなくてもよいのではないかという意見もありますが,結婚ができないことで困ることはたくさん考えられます。例えば以下のような場面です。

 

① パートナーが病気で意識不明になった時に,同性パートナーの場合,医師の話を聞くことを病院から拒否されたり,面会拒否されたりすることがあります。

 

② パートナーが外国籍であった場合,異性間であれば結婚することで在留資格を得ることができます。同性カップルにおいては,(2019年になってから「定住者」として在留特別許可を認める事例も出てきてはいますが,)結婚ができないので留学ビザ等がない限り,日本で一緒に暮らすことは困難であるといえます。

 

③ パートナーが亡くなった場合,どれだけ長く生活を共にしていたとしても,遺言がない限り,何も相続できませんし,社会保障や税制などの法的保護もありません。

 

④ 他にも,同性パートナーを生命保険金の受取人にすることはできませんし,携帯電話の家族割引も適用されません。マンションの入居を拒否されるケースもあるようです。

 

その他にも,生活の様々な場面で理不尽な扱いを受ける場面に直面することがあります。

上記のような,同性カップルの生活上の不利益解消するため,九州においては,福岡市が2018年度から「パートナーシップ宣誓制度」を九州で初めて導入しました。法的拘束力はありませんが,宣誓したカップルは夫婦と同じ条件で医療施設での病状説明の立会いや,市営住宅への申し込みが可能となりました。北九州市でも福岡市と同様に,2019年7月から「パートナーシップ宣誓制度」が導入されました。また,福岡県だけではなく,熊本市,宮崎市,長崎市でも導入されるなど,九州各地でパートナーシップ制度の導入が拡大しています。

上記取り組みが広がり,日本においても性の多様性を社会制度に反映する動きが少しずつ始まっていることは大変喜ばしいことではあります。しかし,一方で,上記パートナーシップ制度には法的拘束力はなく,自身が居住する自治体に同制度がなければ利用することができませんし,引っ越し等をする際にはパートナーシップを解消するなどしなければなりません。同制度の構築だけでは,異性カップルと同等の法的恩恵を同性カップルが受けることができないなど,不十分な点がまだまだ多くあるといえるでしょう。

 

4 まとめ

 本来,誰が誰と愛し合うかは当事者の自由であり,他者が規制することはできません。先に述べたとおり,現行憲法には個人の尊重や幸福追求権が保障されていることからも(憲法13条),結婚するかしないか,誰と結婚するかについて,当然に人は自由に決定できる権利を持っているはずですし,同性婚を認めることが憲法違反になるという結論にはならないだろうと考えられます。

 上記「結婚の自由をすべての人に」訴訟により,全ての人が自分の愛した人と結婚することができる自由を取り戻し,ひいては社会の中で性的マイノリティに対する差別や偏見がなくなることを切望します。

 

弁護士 藤本 智恵

 

Comments are closed.