火災保険の「被災」面積とは?
(1)「被災」面積とは?
住宅の延床面積に対する「被災」面積が例えば80%以上で全焼扱いとする火災保険契約の場合には、「被災」した延床面積が80%以上にあたると評価されれば、具体的な修補額の争いや家財の具体的な損害立証をしなくても保険金全額が支払われる。
そこで、「被災」面積の「被災」の原因や程度はどのようなものかが問題となる。
(2)損傷類型ごとの検討
損傷類型ごとの検討によれば一般には次のように分類される。
しかし、一部でも「被災」の範囲に含まれるからといって、その部分を含む部屋全体が必ずしも「被災」面積に含まれると処理されるわけではない。
従って、部分損の事例では事案によっては「被災」面積が70%にのぼるかどうかが大きな争点となりうる。
① 熱による炭化・変性・溶解:「被災」範囲に含まれる。
② 消火活動による破壊:「被災」範囲に含まれる。
③ 消防冠水:「被災」範囲に含まれるかどうかは程度による。
例えば、「本来の使用目的に支障が生じた状態で、かつ全体的な損害状況を踏まえ、当該箇所の強度、外観、機能等の要素を考慮して、被災面積に含めるか判断する。」単なる煤汚れなどの汚損は清掃で足りるので「被災」範囲に含まれない。
(3)消防署作成の「火災調査報告書」との関係
なお、消防法に基づく火災調査において、湯河原町では、「焼き損害」とは「火災によって焼けた物、熱によって炭化、溶解又は破損した物等の損害」を指し、「消火損害」とは「消火活動によって受けた水損、破損、汚損等の損害」を指すとされている(湯河原町消防訓令第1号『火災等調査規定』第5条第3項)。
消火活動による破損等を含むかどうかという点で、火災保険における被災面積の判断と消防署作成の「火災調査報告書」に記載された「焼損面積」は必ずしも一致しない。
火災保険事故では火災調査報告書が重要な証拠になるが、「被災」面積を確認する場合には注意が必要である。
弁護士 吉武 みゆき