中村荘火災と北九州市の生活保護行政について

2017年09月15日

 2017年5月、小倉北区の木造二階建て共同住宅にて火災が発生し、入居者のうち6名の方が死亡、5名の方が入院するという被害が起きました。心より哀悼の意を表します。

 さて、私が所属する「北九州市社会保障推進協議会」では、このような被害を踏まえ、その背景について検討し、北九州市の生活保護行政と住宅対策にも問題があるのではないかと考え、市に対し以下の見解を表明して改善を求めました。

 今後、北九州市との懇談などを通じ、引き続き改善を求めていきたいと考えています。

弁護士 池上 遊

 

中村荘(小倉北区清水)火災と生活保護行政に関する要請書

北九州市長 北橋 健司 殿

2017年6月16日

北九州市社会保障推進協議会

会長 高木 健康

 

 5月7日(日)午後11時に小倉北区清水の木造二階建ての共同住居中村荘で発生した火災から1ヶ月が過ぎました。この火災では入居者の内6名が死亡し、5名が煙を吸うなどで入院しています。死亡した6名の内4名の身元は判明していますが、依然2名の身元は不明のままです。

 各紙の報道にあるように、この中村荘は何らかの事情で住居を失った方、身内など頼る人がなくて保証人がいないなどの生活や住居に困窮した中高年者が「簡易宿泊所」がわりに利用していました。入居者には生活保護受給者や申請中の方が含まれていました。また、北九州市の福祉事務所やホームレス巡回相談担当者も中村荘を支援が必要な相談者に紹介していました。

 こうした共同住居の実態をふまえて、私たち北九州市社会保障推進協議会は、尊い6人の生命が犠牲になった今回のような不幸な火災を繰り返さないために、北九州市の生活保護行政と住宅対策について以下の見解を表明し、改善を求めます。

 

1.今回の尊い生命が奪われた火災の背景には、北九州市では生活保護における住宅扶助額が全国政令市や近隣自治体に比べて異常に低い(単身29,000円*福岡市34,000円、苅田町32,000円など)ことがあります。低い住宅扶助で入れる住居は、古くて狭い木造住宅などの劣悪な住居になります。北九州市は今回の火災後の対策の一つとして福祉事務所ケースワーカーを対象とした防火と危険住居の消防への通報のための研修をおこなっていますが、住宅扶助が低いままでは、安全な住居の供給を求めるのは困難です。私たちはこれまで市に対して、北九州市の住宅扶助の低さの改善を求めることを要求してきましたが、実現していません。今回の事件を機会に、北九州市が、国に対して北九州の住宅扶助を他都市並みに上げるよう要求することを求めます。

 

2.北九州市では、10年前の連続餓死事件を経て、それまでのような露骨な水際作戦(窓口での追い返し)は少なくなりました。しかし、申請から決定までの期間は相変わらず長く、1ヶ月近いものが大半です。保護が決定すればアパート等への入居費用が給付されますが、住居のない人は申請から決定までの1ヶ月近くを路上で待たされることになります。そのような人は、1日500~1000円で利用できる中村荘などを利用せざるを得ません。保護の決定は原則通り14日以内になすべきであり、住居のない緊急を要する人に対しては更に急いで決定をするよう求めます。

 

3.単身者の増加や高齢化などを背景にして、保証人がいない人の住居確保が問題になっています。保証人を頼める人がいない人は、賃貸借契約を結ぶのも困難な状態です。そのような人は、中村荘のような保証人不要の住宅を選択せざるを得ないことになります。中村荘が「簡易宿泊がわり」に紹介、利用されてきた理由の一つにもこの保証人問題がありました。北九州市には多くの市営住宅がありますが、保証人を要求しているため、市営住宅に入るべき人が入れない例が多くあります。高齢者住宅への家賃補助利用も保証人を要求されます。少なくとも、市営住宅や家賃補助付きの高齢者住宅については、保証人がいなくても賃貸借契約を結べるようにすべきです。

 

4.北九州市では、生活保護決定による住居確保を待てず、緊急に一時的な住居確保などの援助が必要な人への援助制度が不足しています。今あるホームレス支援センター、無料低額宿泊所(ほうぼく館)では不十分です。「緊急シェルター」の設置や、救護施設(生活保護法)や養護老人ホーム・軽費老人ホーム(老人福祉法)を活用した「一時利用」のしくみを市の施策として実施する必要があります。住むところがない人への緊急援助は行政の責任と考えます。その実現のために、上記の制度を検討・実施されることを求めます。

Comments are closed.