体育大会の組体操の練習中の落下事故

2011年08月15日

 公立高校の男子生徒達が柔道場で体育大会の組体操の練習をしていたところ,待機中の生徒達の一部がお互いに肩車の態勢をとりあっているうちに,ある生徒(原告)が土台の生徒の肩に両足をかけたまま後ろに反った状態になり,首から落下して胸部以下不随の怪我をしました。

 裁判では,主として学校(教師)の監督責任の有無が争われました。

 まず,判決は前提事実として,柔道場で76人もの男子高校生に対して,監督の教師は(わずか)6名であったこと,組体操の練習は初日であり,(疲 れて気が緩みやすい)6限目の授業であったこと,一部の生徒が電柱の練習をしていたが,待機中の生徒達数名が肩車のような態勢をとりあってお互いにじゃれ あっていることに教師達が皆気づいていたこと,しかし,教師は誰も注意しなかったことを認定しました。

 その上で,判決は概要次のような教師の安全配慮義務違反を認めました。
 組体操,特に電柱の練習の場合には落下の危険が伴うので,教師の意識が練習に集中して待機中の生徒への監督がおろそかになりがちで,気が緩んだ待 機中の生徒が自主練習や関連する行為をするおそれがあること,従って,もし待機中の生徒がこのような行為をしていたら中止させる義務があり,練習者の監督 と待機中の生徒の監督と予め役割分担することも必要になること,肩車は,男子高校生の生徒の体重を考えると,(子供と大人が肩車をする場合とちがって)バ ランスを崩したり等する危険な行為であること,高校生は血気盛んな年頃であり,自己の運動能力を試してみたいとの欲求が生じても不思議はなく,高校の教師 であればそのような生徒の実態を認識していたはずであること,従って教師は(練習者だけではなく待機中の生徒の含めた)全体に注意を向けるべきであったの にこれを怠った過失があるというのです。

 ただ,判決は,このように福岡県の責任を認める一方で,怪我をした原告生徒が故意に後に体をそらせたとして7割の過失相殺をしました。

 怪我をした原告生徒が故意に後に体をそらせたとする判決の認定には納得できませんが,諸般の事情を考慮して控訴はしませんでした。そして,福岡県も控訴しなかったことから一審判決が確定しました。

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