労災事故事案で訴訟上の和解成立

2018年10月05日

裁判所 労災事故の被害者の方からご依頼を受け、当時の勤務先企業に対する損害賠償請求訴訟を提起した事案が、和解により終了しましたので、ご報告します。

 勤務先は、北九州市所在の会社で、被害者は、事故当時、スクラップなどの分別の業務に携わっていました。事故は、その分別の作業の中で、被害者の顔にドラム缶が当たったというものでした。

 被害者はこの事故により事故当時やその前後の記憶を失うほどの肉体的衝撃を受け、約2年にわたる入院生活とその後現在まで続くリハビリに取り組まざるを得なくなりました。身体に重い麻痺が残り、てんかんの症状などが後遺障害として残ってしまったためです。後に、この後遺障害について、労基署からは2番目に重い、2級という認定を受けています。

 労災事故については、労基署から労災保険給付による一定の補償が受けられますが、これにも限りがあります。そこで、被害者の方からご依頼を受け、当事務所において、被害の完全救済のため、訴訟を提起しました。

 一審の福岡地裁小倉支部では、会社側は、被害者の過失が大きく、会社に責任はないなどと全面的に争ってきました。しかし、会社側の主張はほとんど認められず、被害者及びそのご家族に対して、3600万円を超える損害賠償を命じる判決が出されました。

 これに対し、会社側は控訴しましたが、福岡高裁においても、会社側に責任が認められることを前提に、話し合いによる解決が検討され、このたび和解が成立しました。

 本件事故は、スクラップローダと呼ばれる建設機械(ショベルカーのようなもの)のアームの先端に取りつけられたグラップルと呼ばれるアタッチメントでドラム缶が保持されていたところ、被害者がアームの旋回範囲内に入り、ドラム缶がグラップルから滑り落ちたという事故態様であり、確かに被害者の過失が認められざるを得ない事案でした。

 もっとも、作業の過程で、異物を取り除くためにアームの旋回範囲に入らざるを得ない場合があり、実際にそのような行動を取ることはこの会社でたびたび確認されていました。そうである以上、そのような行動を取らざるを得ない場面があることを想定し、事前に、機械を操作する人、旋回範囲内に入る人との間で明確な合図を取り決め、日頃からこの点を徹底して確認して事故が起こらないようにしておくべきでした。

 したがって、被害者に過失があるといっても、会社の責任がなくなるものでもなく、実際に、一審判決は以上のような点などを考慮して、会社に7割の過失を認めたのです。

 このような有利な一審判決をてこに、高裁において被害者の方も了解いただける内容の和解を勝ち取ることができました。

 今後も労災事故事案の適正な解決のために被害者のサポートに全力を尽くしたいと思います。

以上

弁護士 池上 遊

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