大野城市の生活保護事件で勝訴確定

2014年04月10日

弁護士 髙木佳世子

  1.  大野城市で生活保護を受給していた原告Aさんは、年金が少なく、70歳を過ぎてから、膝を手術しなければならなくなって仕事ができなくなったた め、生活保護を受給するようになりました。申請のとき、老齢年金と遺族年金を受給していることを申告して資料も提出していたのに、福祉事務所は遺族年金を 見落としており、月々約1万4000円多く保護費を支給してきました。Aさんは、保護費の金額に疑問を抱くこともなく、年金と保護費を生活費として全て使 い切って生活してきました。

     平成23年3月、過誤払いがあったとして福祉事務所長は全額(約29万円)を生活保護法63条に基づいて返還するよう求めました。


     また、Aさんは膝が悪かったため、30年以上住み続けてきたエレベーターのない団地で、低い階への転居を勧められており、ちょうど低い階の部屋が空いた ため、転居することになりました。しかし、福祉事務所は、生活保護で支給される家賃(住宅扶助)の特別基準(4万1100円)を超えていることを理由に、 敷金は1円も出さないと決定しました。また、家賃は実際には4万3600円ですが、特別基準までしか支給されないことになりました。



  2.  これらの処分3つについてAさんは2012年4月に福岡地方裁判所に提訴し、2014年3月11日、判決が言い渡されました。判決は、 原告が全額を生活保護費として使い切っており、全額を返還させることは原告の自立を著しく阻害する可能性があったとして、生活実態の調査や過誤払い金の使 途を調査せずに行った返還決定は違法であると認め、取り消しました。

     また、敷金については、行政内部の通知は、特別基準×3まで支給してよいことを定めたにすぎず、家賃が特別基準を超えているときに1円も出してはいけないと言っているわけではないとして、支給しないとする決定を取り消しました。

     家賃については、特別基準を超える額は認められませんでしたが、その理由は、大野城市内に特別基準以内の家賃の家がなかったわけではないから、というこ とです。しかし、長年住み続けた、人間関係のある団地でしか安心して地域生活を送れない高齢のAさんの特殊事情をふまえて、柔軟な対応がなされるべきで あったと弁護団としては考えています。

  3.  大野城市は判決に対して控訴せず、Aさんの勝訴判決は確定しました。63条の返還額の決定、敷金支給の点ともに、この判決をきっかけに今後の全国の生活保護の運用が改善されることを願っています。

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