看護師フットケア事件のご報告

2009年05月04日

 看護師フットケア事件は,ある女性看護師が十七年間勤務していた病院で認知症高齢者二名の「爪をはがした」として,平成十九年七月二日に逮捕 され,傷害罪で起訴された事件です。この事件について,今年三月三十日,福岡地裁小倉支部は傷害罪の成立を認め,懲役六か月,執行猶予三年の刑が宣告され ました。女性看護師は即日控訴しました。
 
 弁護人である私と東敦子弁護士は,裁判の過程で,看護師の自白調書については,警察・検察の不当な逮捕勾留下に誘導的に得られた供述であること, また,看護師のフットケア行為が,病変し肥厚した爪の「爪切り行為」であり,当初マスコミで報じられたような「爪を剥ぐ」などの行為では決してないことを 主張しました。

 私は,看護師との打合せの際,彼女の話を聞く度に,これは無罪にならなければならないケースだと思いました。高齢者の爪切りは,爪に顔を近づけ て,慎重に切り進めていく看護行為です。特に医療点数上の評価も受けません。本件の看護師は,高齢者の爪切りを率先して引受け,他の病棟スタッフにも追随 してもらい,患者の方々によりよい療養生活を送ってもらいたいという熱意に溢れた看護師でした。そのような看護師が有罪となれば,高齢者のフットケアに取 り組むことを現場の看護師の方々が控えてしまう点で,看護現場への悪影響は相当に大きいものがあります。

 しかし,裁判所は,高齢者に対する爪の処置自体は,一般的には看護行為に相当すると認めながらも,看護師の具体的な行為の目的を「自分の楽しみの為の行為」で,「痛みや出血に無配慮」であり,「ケア目的ではない」ものと判断しました。

 これは,一部の病院関係者の証言などをもとにした事実評価の誤認によるものと弁護団では考えています。今後,福岡高裁での控訴審では,フットケア現場の実態・実情を正しく踏まえた審理がつくされるよう,主張,立証を行っていく予定です。


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