TFCC損傷14級獲得事例

2018年11月05日

 

交通事故170719

 

1 事故の概要

 本件は,40代の男性が自転車運転中に交差点で自動車と接触し,転倒し受傷した事故です。転倒した際に右手を地面に突いたため,当初から右手首痛を訴えていました。右手首の痛みは,利き腕である右手で問診票に記入できない程でした。

 

 

2 非該当の認定

 当初より,私が代理人として被害者請求(被害者側で診断書やレセプト等の資料を入手し,自賠責保険会社に対し,損害賠償請求や後遺障害等級の認定申請を行うもの)を行いました。

 後遺障害診断書に「TFCC損傷」と記載されていたこと,他覚所見も認められるとの記載があったため,医療機関から取り寄せた資料をそのまま自賠責保険会社へ送付して後遺障害等級の認定申請を行いました。特段の問題もなく後遺障害等級12級13号,少なくとも14級9号が認定されると考えていました。

 ところが,結果は,私の予想に反して後遺障害等級非該当というものでした。

3 異議申し立ての準備

⑴ 方針決定

 非該当の結果を受けて,被害者である依頼者と打ち合わせを行いました。お話をうかがうと,今でも右手首の強い痛みが残っているとのことでした。このまま非該当で終わらせてはいけないと判断し,異議申立てを行うことになりました。

⑵ 診療記録取り寄せ

 診療記録を全て取り寄せ,症状の推移や治療の経過を整理しました。とても地道で時間のかかる作業ですが,骨折などの明確な他覚所見を伴わないものの,被害者が痛みを訴えている事案では重要な作業です。

 これにより,被害者が事故直後から一貫して右手首の痛みを訴えており,同部位に対する治療が継続していたことが明らかとなりました。

⑶ 医師面談

 文献などによりTFCC損傷に関する医学知識を補充した後,主治医との面談を行いました。主治医は,MRI画像,受傷状況,被害者自身の痛みの訴えなどから「TFCCだと考えられる」との見解を述べられました。忙しい医師に一から診断書あるいは意見書などの作成をお願いすると時間がかかってしまうため,こちらで質問事項を作成し,それに回答していただくという形で意見書を作成していただきました。

⑷ 陳述書作成

 主治医の意見書とは別に,事故後,日常生活のどのような面で困っているのか(痛みを感じているのか)などについて,依頼者の陳述書を作成しました。

 この陳述書についても,異議申立てに必要となる情報を過不足なく記載する必要があるため,依頼者の話を聴き取った私が陳述書を作成し,依頼者に間違いがないことを確認した上で,依頼者に署名押印を頂くことで作成しています。

4 異議申立て

 上述の活動を総括する意味で私が意見書を作成し,本件は後遺障害等級12級13号,あるいは14級9合が認定されるべきだとの主張を行いました。同意見書に,主治医の追加意見書,依頼者の陳述書,病院の診療記録などを添付して提出しました。

5 14級9号の認定

 認定結果は,「明らかな」器質性損傷が認められないことなどから12級13号(他覚所見により医学的に証明可能な神経症状)には該当しないものの,「医学的に説明可能な痛みやしびれなどが持続している」として14級9号に該当するというものでした。主治医も,MRIの画像上明確なTFCCが認められるとの見解ではなかったため,やむを得ない結果だと思います。

 なお,いずれも神経症状に関する後遺障害である12級13号と14級13号の違いについては,また別の機会に説明させていただこうと思います。

6 最後に

 私は基本的に被害者請求を行っており,必要があると判断すれば,当初から主治医に作成していただいた意見書や,自ら作成した意見書を添付して後遺障害等級認定の申請を行っています。

 ところが,本件では,主治医作成の後遺障害診断書に「TFCC損傷」の記載があり,MRIなどの他覚所見も認められるとの記載もあったため,少し油断していました。

 この経験を活かし,今後は,後遺障害診断書などの記載のみから安易な見通しを立てることはせず,当初から全力で被害者請求を行っていこうと思います。

弁護士 上野 直生

Comments are closed.