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親権,養育費など子どもにまつわる観点について

親権について

 ⑴ 父母が離婚する場合,未成年のお子さんについては,父母のいずれか一方を親権者と定めなければいけません(民法819条1項)。

どちらを親権者とするかで争いとなるケースがありますが,この場合,親権者はどのような基準で判断されるのでしょうか。

⑵ 最も大きな原則は,親権者は,「子の利益及び子の福祉」を基準としてなされなければならない,というものです。

つまり,父母のどちらを親権者としたほうが,お子さんが健全に成長できるか,子にとってふさわしいか,ということです。

そして,現在の家庭裁判所の実務では,その判断のため,一般的に,次のような要素が考慮されています。
・これまでの監護養育状況を観察して,どちらが主たる監護者であったか(どちらがお子さんとの心理的,身体的な結びつきが強いか)
・現状の監護養育は安定しているか。お子さんは生活環境に適応しているか(ただし,違法に現在の監護が開始された場合,必ずしも重視できない)。
・子の意思はどうか。
・もう一方の親との面会交流を認めるなどして,お子さんに対してもう一方の親の存在を肯定的に伝えることができるか。

逆に言えば,上記以外の要素は,親権者の判断にあたって重要な要素とはなりづらいと言えます。例えば,経済状態や,一方の不貞行為などです。

 

 ⑶ 親権について本格的な争いとなった場合,家庭裁判所の調査官による調査も入り,従前の監護状況や今後の監護方針等について,かなり詳細な主張が必要となります。

このようなケースでは,弁護士に相談をされることをお奨めしています。

 

養育費について

⑴ 父母が離婚し,未成熟の子がいる場合には,養育費の支払も問題となります。

⑵ 養育費の支払が始まるのは,離婚が成立した時点からです。

ただし,離婚の際に養育費について合意をしていない場合には,養育費の調停の申立てをした月からとされることが一般的です(申立て前に養育費の請求をしたことが客観的に明確な場合,請求した月から認められることもあります。)。

他方,養育費の支払の終期については,現在の実務では,20歳に達するまでとされることが一般的です。もちろん,合意により22歳まで等と定めることもあります。なお,平成30年6月に,民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げること等を内容とする法律が成立しました。しかし,法務省からは,①「子が成年に達するまで養育費を支払う」と取り決めていた場合,その後成年年齢が引き下げられたとしても,従前どおり20歳までの支払義務を負うことになる,②成年年齢が引き下げられたからといって,養育費の支払期間が当然に18歳に達するまでとなるわけではない,との見解が示されているところです。

⑶ 養育費の金額については,父母の収入から算定されます。

現在の家庭裁判所の実務では,養育費の「算定表」を用いて算定を行うことが一般的です。ただ,算定表の修正が必要となる場合もあります。例えば,
・離婚後も,親権者ではない親が,お子さんの住居費(住宅ローン等)や教育費を直接支払っている場合
・夫婦間の子以外にも,被扶養者(連れ子,再婚後の子等)がいる場合
などは,これらを考慮した修正が必要となります。

また,父母に複数の収入がある場合など,収入の認定自体が容易でない場合もあります。

⑷ なお,一旦決定した養育費についても,その後の事情変更(典型的には,大きな収入の増減等)により,養育費の増減ができることがあります。

ただし,事情変更があれば当然に養育費が増減するわけではなく,家庭裁判所での調停・審判が必要となることに注意が必要です。

⑸ 養育費の取り決めは,その後の生活に決定的に重要な影響を及ぼします。

もちろん,機械的に双方の収入をあてはめて金額が算定されるケースもありますが,そうでない要素を主張しなければならないケースも多々ありますので,一度弁護士にご相談頂くことをお奨めします。