業務委託の労働問題
業務委託契約とは,「一定の業務の遂行を委託する契約」です
民法に定義はありませんが,請負契約(民法632条),委任契約(民法643条)などに似た性質を持つ契約が多いと考えられます。契約の具体的内容は,当事者の合意(業務委託契約書など)の内容によって決まることになります。
しかし,形式的には「業務委託」の形式をとっていても,実質的には,労働基準法(労基法)や労働契約法(労契法)上の「労働者」にあたる場合があります。
労基法や労契法上の「労働者」にあたる場合には,労基法や労契法の規定の適用(残業代や,解雇権濫用法理等に関する規定など)を受けられることはもとより,最低賃金法,労災関係法令等についても適用を受けられることになりますので,実務的に極めて重要です。
労基法・労契法上の「労働者」にあたるか否かは,以下の基準で判断されます。
① 指揮命令関係の有無
ⅰ仕事の依頼等への諾否の自由の有無,ⅱ業務遂行上の指揮監督の有無,ⅲ勤務時間・勤務場所の拘束性の有無,ⅳ他人による代替性の有無などから判断されます。
② 賃金性(労務対償性)の有無
報酬が労務の対価となっているかにより判断されます。一般的に,労務提供の時間の長さに応じて報酬が決まる場合には,賃金としての性格が強くなります。
③ その他の要素(補助的)
ⅰ事業者性の有無(機械・器具の負担等),ⅱ専属性の程度,ⅲ公租公課の負担などから判断されます。
つまり,依頼された仕事に対して事実上拒否できず,委託主の指示に従って仕事を行い,業務の開始時間・終了時間を厳密に指定され,他の者に代替できない仕事を行い,仕事の時間数に応じて報酬が決まるような場合には,「業務委託契約」の名称であったとしても,労基法上の労働者として扱われる場合があります。
判断に迷われる場合には,一度弁護士にご相談ください。