離婚調停を申し立てられた方へ
1 離婚調停とは
離婚調停の手続は,家庭裁判所に出向き,調停委員と面談しながら,離婚に関する話し合いを行う手続です(正確な手続の名称は「夫婦関係調整申立」といいます。)。
法律上,離婚に関して裁判を申し立てる前に,必ず調停申立を行うことが必要とされています(家事事件手続法257条1項,244条。調停前置主義)。したがって,調停手続において,調停を申し立てた申立人が,従前の話し合いよりも譲歩する条件を示すとは限らない点にご注意ください。
2 申し立てられた場合の対応
⑴ 手続のはじまり
あなたに対して離婚調停の申立があると,あなたには調停申立書の写し,調停期日の通知書などが送られてきます。仕事などで出ることが難しい場合は,担当の書記官宛てに郵送または電話で連絡を入れましょう。
調停期日の通知書は,本人確認のために期日で提示を求められるので,大切に保管し,当日持参しましょう。
話し合いに応じるかどうかは自由ですので,まったく対応しないことも可能です(無断欠席する場合に5万円の過料が科される可能性もありますが稀です。)。
⑵ 答弁書について
調停申立書に記載された申立人の認識や希望について,あなたの認識や希望を答弁書というタイトルの書面で,期日より前に提出しましょう。答弁書については,ひな形が送られてきますので,それを参考に書いて下さい。
調停委員の理解を助けるためにも,通帳類などの資料の写しも提出して下さい。
相手に知られたくない説明や,資料がある場合,非開示の希望に関する届出書を提出することもありますので,書記官に確認して対応してください。
3 調停手続の進め方
⑴ 期日の開かれ方
指定された期日では,調停委員のいる部屋に呼出しがあるまで指定された待合室で待機することになります。
原則として,調停手続のはじめと最後に,申立人と同じ部屋で同席し,調停委員からの説明を受けることになります。DV被害などの理由でどうしても申立人と同席したくない場合は,担当書記官に率直にその意思を伝え,配慮を求めましょう。
通常は,最初に申立人が調停委員のいる部屋に入り,申立に至った経緯や離婚に関して希望することなどを説明します。
その後,入れ替わりで相手方が部屋に入り,申立人と同様に説明します。そのようなやり取りをくり返し行うことで,当事者の妥協できる点を引き出し,合意できないかを模索していくことになります。
その場で説明するのが難しい場合は,メモを用意しておき読み上げるなどしても構いません(メモをコピーして,その場で提出する準備をしておくのがよいでしょう。)。
1回の期日の時間は,長いときで3時間ほどになります。
その期日では結論が出ず,合意ができない場合は,次回の期日が指定されて終了します。次回の期日までに検討すべき事項や,調べて資料を取りよせる事項がある場合もあります。
⑶ 注意点
調停委員(通常は2名で担当します。)は,当事者の一方の見方をすることはなく,公平な観点から説明を聞き,話し合いの内容を整理し,妥協点を模索する義務を負っています。
あなたから見て,調停委員は申立人の言い分ばかりを重視していると思えるとき,たいていの場合,申立人も逆の印象を持っていることが予想されます。これは一旦当事者の言い分をなるべく正確に他方の当事者へ伝え,感想や考え方を聞くという手続の性質上,相手方と過去に一度は決裂した話し合いを,再びくり返しているように感じてしまうからではないかと思います。
調停委員は,それまでの話し合いでは出てこなかった視点や方向性を示してくれる可能性があります。期日では時間は十分にありますので,落ち着いて調停委員の意見にもじっくり耳を傾け,妥協点を模索して下さい。
⑷ 合意ができたら
合意できた場合は,合意内容を文章にして記載した調停調書を作成してもらい,その交付を受けます。
それ以降,調停調書の内容に従って,財産を分け,慰謝料・養育費の支払い,お子さんとの面会を実施することになります。