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退職の仕方

辞職の自由

辞職(労働者による一方的な解約)は原則自由です。憲法でも、労働者に職業選択の自由(憲法22条)が保障され、奴隷的拘束は禁止されています(憲法18条)。

 

期間の定めのない契約の場合

期間の定めのない契約の場合には、原則として2週間の予告期間を要する(民法672条)ので、労働者の意思表示が使用者に到達してから2週間経過後に労働契約が終了することになります。

 

期間の定めのある契約の場合

(1)解約時期

有期雇用者の契約期間途中の辞職は、「やむをえない事由」がある場合にのみ直ちに解約できます。

但し、契約初日から1年以後においては、いつでも退職できます(労働基準法137条)。もっとも、専門的知識を有する労働者及び60歳以上の労働者との有期契約は対象外です。

(2)「やむをえない事由」の意義

「やむをえない事由」にあたる場合としては、雇用保険法第33条「雇用保険の受給制限のない自己都合退職」や、特定受給者の用件に該当する場合(→※)などが考えられます。

※https://www.hellowork.go.jp/insurance/insurance_range.html#jukyuu
(「ハローワークインターネットサービス」HPより)

(3)労働強制の可否

「やむをえない事由」がないにもかかわらず辞職の意思を明らかにし、以後実際に就労しなかった場合には、労働者の意思に反して労働を強制することはできないので、損害賠償の問題として処理されると考えらます。

(4)損害賠償責任

「やむをえない時由」を故意・過失により生じさせた当事者は、他方当事者に対し、解約により生じた損害につき賠償責任を負う可能性があります(民法628条)

¶ マガジンプランニング事件(京都地方裁判所平成23年7月4日判決/労旬752号/控訴審の大阪高裁平成23年12月6日判決は原審を維持し、会社の上告に対して最高裁は上告不受理として確定。)

会社の契約違反によって労働者が契約期間の途中で退職せざるを得ない「やむをえない事由」が発生した事案において、使用者に残期間の賃金相当額の損害賠償責任を認めました。

 

損害賠償の予定の禁止

(1)賠償予定の禁止~労基法16条

「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」(労基法16条)とされています。
契約期間の途中で退職した場合の違約金や損害賠償の予定の定めがあると、労働者はその意に反して雇用関係の継続を強制されることになるので、これを禁止し、労働者の退職の自由を確保する趣旨です。

例えば、美容院の見習い労働者が資格取得前に退職した場合に、見習い期間中にかかった食費等の返還をさせるような契約は、同条に違反します(昭和23,7,15基収2408号)

 

(2)研修費用、留学費用の返還

ア 労基法16条違反か否かの判断基準

研修費用や、留学費用を会社が負担ないし立替をして、一定期間勤務した場合には、その費用償還を免除する旨の合意がなされる場合があります。
かかる合意が労基法16条に違反しないか否かについては、

①研修・留学の任意性②業務性③終了後の拘束期間等を考慮して実質的に労働者の退職の自由を拘束すると評価できるか否かにより判断されます。
これは、使用者が労働契約と別に、免除特約付き金銭消費貸借契約を締結した形式を整えていても同様です。
なお、採用内定者への研修費用について内定辞退者に研修費用を返還される合意についても、基本的には同様の基準で考えればよいと思います。

イ 研修費用についての判例

【16条違反肯定】
¶和幸会事件(大阪地裁平成14年11月1日労判840号32頁)
¶徳島健康生活協同組合事件(高松高裁平成15年3月14日労判849号9頁)
【16条違反否定】
¶コンドル馬込交通事件(東京地裁平成20年6月4日労判973号67頁)
¶東亜交通事件(大阪高裁平成22年4月22日労判例1008号15頁)

ウ 留学費用についての判例

【16条違反肯定】
¶富士重工事件(東京地裁平成10年3月17日労判717号14頁)
¶新日本証券事件(東京地裁平成10年9月25日労判746号7頁)
【16条違反否定】
¶長谷工コーポレーション事件(東京地裁平成9年5月26日労判717号14頁)
社員留学制度でアメリカ大学院留学事例
¶野村證券事件(東京地裁平成14年4月16日労判872号40頁)
MBA取得のためのフランス留学事例
¶明治生命保険事件(東京地裁平成16年1月26日労判例872号46頁)
職員留学制度を利用してアメリカに留学しMBAを取得した事例。