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解雇事件Aさんの場合

使用者は,労働者を自由に解雇できません。労働契約法にもそのように定められています。解雇処分を争っているAさんのケースをご紹介します。

システムエンジニアとしてB社に入社したAさん。希望するB社に入社できたことを喜び,誇りをもって働いていました。しかし,Aさんが配属された部 署は慢性的な人員不足であったため,Aさんは残業を余儀なくされます。入社後結婚をし,子どもが生まれたAさんは,子育てや家事の分担をする必要があった ため,育児規程に基づく申請をB社に申し出ましたが,他の社員は申請せずに頑張っているなどとの理由で拒まれます。

育児・家事と仕事を両立したいと思いながらも,うまくいかない日々が続き,ついにAさんは精神面で変調をきたしました。遅刻をし,所定労働時間も割 り込むようになり,勤務評定も低下していきました。Aさんは,このままではいけないと,病院でカウンセリングを受ける努力をし,その結果,勤務評定は徐々 にですが上昇しました。

ところがここで,Aさんは,自宅マンションから転落事故を起こしてしまいます。そして治療を終え,復職希望を伝えたところでB社から解雇処分を受けてしまいます。Aさんは,この解雇は不当であると労働審判の申立てを行ったのです。

労働審判では,B社の人員体制上の問題などを指摘した結果,解雇は無効であるとの審判結果が出ました。B社が審判に異議を申し立て,事件は地方裁判 所に移行しましたが,裁判所は,Aさんが自らカウンセリングを受けて勤務評定が上昇したのに,その点を考慮しないままに解雇したことは違法であるとして, 解雇無効の判決を下しました。現在は,B社が控訴したため,Aさんは高等裁判所で戦っています。

先述の地方裁判所の判決は,使用者は労働者を自由に解雇できないとする過去の裁判例に従っています。その裁判例は,労働契約法は,(1)能力及び成 績の不良の程度は著しいものでなければ解雇ができず,人事考課等が相対評価の場合でも単に相対的に低いというだけでは解雇事由に該当しないと解釈すべきで あり,(2)能力や適性に問題がある場合でも教育訓練や配置転換などの解雇回避の措置を尽くすことという制約を雇用主の解雇権行使に課していると述べてい ます。

この裁判例の判断基準に従って救済される労働者の方々は多く存在すると思います。当事務所では,不当解雇を含めて様々な労働問題に関するご相談をお待ちしております。

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