捜査段階の弁護活動
刑事事件において弁護士は、犯罪行為を疑われている方(専門用語で「被疑者」といいます。)の味方となり、様々な活動を行います。今回は、私が実際に携わった万引き事件を例に、捜査段階における弁護士の活動をご紹介します。
なお、本件は警察署に逮捕・勾留されていたケースです。
1 面会・事情の聴き取り
弁護士は、基本的にいつでも被疑者と面会することができます。面会の中では、何故逮捕されることになったのか、疑われている犯罪行為は事実なのか、取調べの中で注意すべきこと等についてアドバイスを行います。
今回のケースでは、ご本人より弁護士出動の要請があったため、警察署へ行き面会を行いました。その際事情を聴き取ったところ、万引きの事実に間違いがないこと、被害者に対し謝罪の意思を持っていることを確認することができました。但し、同種の前科があるため、このままでは刑事裁判が提起され、長期化してしまう可能性があることが判明しました。
2 事件の見通し・方針の相談
弁護士は、被疑者の言い分を前提に、事件の見通しを検討し、今後どのような対応をすべきか方針を相談します。疑われている犯罪行為が事実か間違いかによっても、対応は大きく変わってきます。人生を左右しうる重大な決断であることから、ご本人の意思を尊重し、最も適切と思われる選択を検討します。
今回のケースでは、犯罪事実に間違いがなかったことから、取調べに誠実に応じることとし、また反省の意思を具体的な行動で示すため、被害者へ謝罪・弁償を行うこととしました。
3 関係各所への連絡
逮捕・勾留された場合、ご家族や友人、会社、学校など関係各所に連絡することは容易ではありません。事件の性質によっては、そもそも面会禁止となることもあります。そこで弁護士は、ご本人の希望に従い、このような方々へ連絡を取ったり、双方の様子を伝えたりする役目を果たします。
今回のケースでは、ご家族にお電話で連絡し、差し入れて欲しい物や面会希望日を伝えたほか、当面の間欠勤する旨を会社へ連絡していただくようお願いしました。
4 被害者との示談交渉
被害者との示談交渉も弁護士の重要な仕事です。逮捕・勾留されているご本人に代わって、被害金や謝罪金を支払い、ご迷惑をお掛けしたことについて謝罪を行います。
今回のケースでは、弁護士から被害店舗にご連絡し、本人の謝罪意思を伝え、被害弁償を行うことで示談成立となりました。幸い、代表者の方に事情をご理解いただき、被害届を取り下げていただくことができました。
5 おわりに
本件は、罰金処分により終結となりました。逮捕当初から犯罪行為を認め反省の態度を示していたこと、被害者との間で示談が成立し、被害届が取り下げられたこと等が加味されたものと思われます。弁護士の活動により、事件の長期化を防止できた事例といえます。
刑事事件では、本人が身動きできないことが多いほか、どのように行動して良いか判断がつかない場面に出くわすことも少なくありません。万一、ご自身や家族が刑事事件の当事者となってしまった際には、早急に弁護士へご相談されることをお薦めします。