相続放棄って?
1 相続放棄って?
親や配偶者が亡くなって自分が相続人であるが,親(配偶者)には多額の借金がある
疎遠だった親戚が亡くなって自分が相続人であるが,何十年も関わりが無いので相続はしなくていい
こんなとき,相続人が取れるひとつの手段として,「相続放棄」があります。
相続放棄とは,一切の遺産相続をせずにすべて権利や義務を承継しない手続きです。
本来,人が亡くなって相続が発生するとき,その対象には,不動産や預貯金,株式等のプラスの財産だけでなく,借金,連帯保証などマイナスの財産も含まれてしまいます。
そのようなときに,プラスの財産もマイナスの財産も共に相続しないというのが相続放棄です。
2 相続放棄の期間制限
亡くなった人(被相続人)の借金を相続しないで済む相続放棄の手続ですが,相続放棄の手続きには期間制限があります。具体的には,「自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に」にしなければなりません。
被相続人が亡くなったのが3ヶ月以上前であっても,死亡により自らが相続人になったことを知った時期が3ヶ月以内であれば相続放棄は可能です。
また,3ヶ月以内に手続が完了する必要は無く,それまでに申請がなされていれば足ります。
相続放棄をする際には,被相続人の財産を調査する必要がありますので,相続放棄をする可能性がある場合にはできるだけ早い段階で,その準備を始めることが重要です。
特に,明らかに債務超過である被相続人であれば問題はありませんが,債務超過であるか直ちに判断できない場合などは注意が必要です(調査の結果,限定承認という選択をする場合も十分に考えられます)。
しかし,現実には,相続放棄はしないつもりで3ヶ月が経過したが,経過後に被相続人の借金が発覚したという場合も考えられます。この場合であっても,相続人が相続財産が全くないと信じたなどの特別な事情があると認められる場合には,相続放棄を認めるとした裁判例があります(最高裁判所判決昭和59年4月27日)。
もっとも,特別な事情の判断にあたっては,個別具体的な事例により判断が異なりますので,詳しくは,弁護士にご相談下さい。
3 相続放棄の手続
相続放棄は,相続人がほかの相続人に対して口頭で伝えるなどの方法では認められず,必ず家庭裁判所に申述をしなければいけません。申述先は,亡くなった人の最後の住所地を管轄する裁判所です(北九州市内の場合は,福岡家庭裁判所小倉支部)。
必要な書類としては,基本的には以下の書類等が必要となります。
○被相続人の戸籍謄本
○被相続人の住民票除票(または亡くなった時点の住所が分かる戸籍の附表)
○相続放棄する人の戸籍謄本
○相続放棄申述書
○収入印紙800円
○郵便切手 ※裁判所によって金額,内訳は異なります
※もっとも,申述人と被相続人との関係によってこれ以上の資料を要求されることもあります。
4 最後に
相続放棄申述の制限期間は3ヶ月と非常に短いです。その間に財産調査や必要書類の作成,収集など様々な作業が必要となります。
相続放棄を検討する可能性のある場合は,いち早く検討を始めると共に,疑問点等あればまずは気軽に弁護士等の専門家へのご相談をお考え下さい。
以上