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Q&A 遺言について

70歳の友夫さんは,数年前に奥さんに先立たれ,長男Aさんと次男Bさんという2人のお子さんがいます。友夫さんは,これまで献身的に介護をしてくれた長男Aさんに,友夫さんの有する不動産や預金を遺したいと考えて,「遺言」(いごん)を作成することにしました。

Q1 友夫さんは,「私の所有する一切の財産を,Aに相続させる。」という文章をパソコン(ワープロ)で作成して印刷し,最後に日付と名前を自筆で書いて,印鑑を押しました。この書面は,遺言として有効でしょうか?

A1 遺言者本人で作成する遺言は,その全文と,日付,氏名を自書し,押印することが必要です(自筆証書遺言)。本文をパソコン(ワープロ)で印刷すると無効となりますので,必ず自書してください。印鑑は三文判で構いません。

 

Q2 友夫さんは,自分で作成した遺言では紛失等の危険があることが不安になりました。他に遺言を作成する方法はあるでしょうか?

A2 公証人役場(大門,黒崎)において,「公正証書遺言」を作成すると確実です。公証人が遺言の内容を確認して原本を公証人役場に保管しますので,紛失や無効の可能性が低くなります。

 

Q3 友夫さんは,一旦Q1の遺言を全文自筆して作成しましたが,数年後,やはりAさんとBさんに平等に遺産を相続させたいと思い直しました。次の場合,最初の遺言は撤回されたと言えるでしょうか?

① 友夫さんが,最初の遺言を破り捨てた場合

② 友夫さんが,新しく「私の一切の財産は,AとBに平等に相続させる」という遺言を作成した場合

A3 どちらの場合も最初の遺言は撤回され,効力を失ったことになります。

まず,①遺言書を物理的に破棄した場合,遺言を撤回したとみなされます。最近,遺言書の左上から右下に向けて赤いボールペンで斜線を引いたことが遺言の撤回にあたるという最高裁判例が出ました。

また,②後の遺言が前の遺言と抵触した場合,抵触した部分について遺言の撤回があったとみなされます。前の遺言を物理的に破棄しなくても,無効となります。

 

遺言の作成や撤回には他にも厳格なルールがあり,思わぬ落とし穴もあり得ます。不安なときは,専門家にご相談ください。

弁護士 今里 晋也

(健和友の会 ぱーとなーより転載)

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