有給休暇の申請で不当解雇
ある医療クリニックに勤務していた女性職員のAさんが,不妊治療を行うにあたり有給休暇を申請したところ,有給休暇申請のとり方が問題として平成23年5月に解雇されるという事件が起こりました。
Aさんは子どもを何とか授かりたいとの必死の思いから不妊治療に真剣に取り組んでいましたが,その最中の突然の解雇でした。
有給休暇の申請は,当然のことながら労働者の権利であって,使用者がそれを拒否することはできません。使用者は,事業の正常な運営上やむを得ない場合に,時季変更権を行使できるだけです。
Aさんは,突然の解雇に対し納得できず労働組合に相談し,また,私達(田篭,後藤弁護士《現:女性総合法律事務所ラレーヌビクトリア》)に相談に来られました。
相談をお聞きして不当な解雇であることは明白でした。しかし,現実に職場復帰をするまでには時間もかかり,その間生活に行き詰ることになってしまいます。
そこで,まず,生活費を確保するため,裁判所に給与の仮払いを求める手続をとりました。裁判所は,Aさんの主張を認め医療クリニックに給与の仮払いを命じました。
その後,訴訟を起こし,平成25年2月7日,ついに裁判所での判決が下されました。裁判でも医療クリニック側は非を認めず,あくまでAさんの解雇 を主張していましたが,判決内容はAさんの主張をすべて認め,Aさんの職場復帰を認める完全勝訴判決でした。この判決に対しては医療クリニック側の控訴も 予想されましたが,医療クリニックも控訴を断念し判決が確定しました。
Aさんの一番の望みは職場復帰でした。現時点では自宅待機となっていますが,近いところで職場復帰が果たされる予定です。
勝訴判決後のAさんの笑顔が忘れられません。