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Q&A 退職勧奨を受けたら

Q 1年前からA社で勤務していますが,最近上司から,お前は仕事ができない,協調性もないなどと言われ,「退職願」を出すように言われています。毎日のように言われ続けるため,不安で夜もよく眠れません。退職願を書いたほうがよいのでしょうか。

 

A 1 解雇は,労働者の経済的基盤を奪う処分であることから,使用者が自由に行うことはできません。解雇が客観的に合理的な理由を欠くような場合は,解雇権の濫用として無効になります(労働契約法16条)。有期雇用の労働者の解雇や雇止めについても,同様の制限があります(同法17条1項,19条)。

2 そこで,使用者は,解雇が無効とされるリスクを嫌って,労働者に「自主退職」や「合意退職」をするよう働きかける(退職勧奨)ことがあります。

労働者が退職勧奨に応じて自ら退職の意思を示してしまうと,後にこれを争うことはかなり難しくなりますので,注意が必要です。

意思に反する「自主退職」は断固拒否する。それが難しければ,少なくとも一度持ち帰って相談するなどして,「その場で返答しない」ことが重要です。

3 なお,退職勧奨が,労働者の自由な意思決定を阻害するものであったり,その手段方法が不当である場合には,損害賠償の対象となることがあります。

裁判例においては,次のような要素が重視されています。

・労働者を職場から排除する組織的な意図がある。

・脅迫的な言動,侮辱的な言動,名誉感情を害する言動がある(衆人環境で激しく批判する等)。

・近親者を呼び出して説得する。

・退職勧奨が多数回,長時間に及んでいる。

・労働者が退職に応じない姿勢を明確に示している。

執拗な退職勧奨を受けている場合には,いつどのような形で退職勧奨を受けたか,メモや録音等により記録していくことが有用です。

以 上

弁護士  今里 晋也

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