年金分割の割合が0.5にならない場合とは?
1 夫婦が離婚する際に,「年金分割」という制度があります。
分割といっても,夫婦間で直接金銭の授受が生じるわけではありません。この制度は,夫婦の合意等に基づき,婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額等)を改定することをいいます。このように分割をしておけば,年金の支給が開始されたとき,元夫婦のそれぞれに対し,改定された標準報酬等に基づき年金が支給されることになります。
2 この年金分割の割合は,原則として0.5とされています。よほど例外的な事情(特段の事情)がない限り,0.5以外の割合となることはありません。
例えば,婚姻期間中に別居期間があったとしても,それだけでは0.5でない割合とする特段の事情にはあたらないとされています。
3 私が担当した事件で,年金分割の割合が0.5を下回る割合となった例がありましたので,紹介します。
私は,元妻から離婚後に年金分割の調停を申し立てられた男性からの依頼を受けました。
この事件は,婚姻期間が40年を超えていましたが,このうち別居期間は20年を超えていました。また,別居期間の後半15年余りは生活費のやり取りがなく,さらに,別居期間中夫婦が連絡をとりあうことはほぼなかったという事情がありました。
このように,①単に別居しているだけでなく,②別居期間中に経済的な依存関係が反復して存在しておらず,③意思疎通をあらわす音信又は訪問等の事実も反復して存在しない場合には,「事実上の離婚」にあたるとして,分割の割合が0.5を下回る余地があります。
上記の事例では,表などを用いて同居期間/別居期間の別,経済的依存関係が存在していた期間/していない期間の別を整理し,戸籍の附票(あるいは住民票)などの証拠と共に主張したところ,最終的に,0.5を下回る割合で合意に至りました。
4 年金分割の割合が原則0.5であることは実務上確定しており,0.5でない割合とすることは容易ではありません。しかし,上記のような特段の事情があり0.5を下回る割合を求めたい場合,又は特段の事情がないにも関わらず0.5を下回る割合を求められている場合などは,一度弁護士に相談して頂ければと思います。