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アルコール依存の万引き事件

泥酔状態でコンビニに行き、カップ酒を手にして店を出る。逮捕起訴され、数ヶ月間服役し、刑期を終えて晴れて社会に戻ったけれど、直ちに同じ態様の事件を起こし逮捕され、今回私が弁護人に選任された。被害弁償を済ませ、今後の人生を考えてもらう。素面の時は、穏やかな人だ。ちょうどマックマック(「地域活動支援センター北九州マック」。 アルコール依存症やギャンブル依存症、その他のすべての依存症からの回復と成長を目指している方たちをサポートしていくための活動を行う団体。)の会報が手元にあるので差し入れた。利用者が、新年の決意をそれぞれに述べた新年号。回復過程を歩んでいる当事者の話が、本人の心に響いた。固い決意と根性だけでは、依存症からの回復は難しいことは身をもって知っている。回復者の話を伺い、治療とサポートに自分を委ねてみようかとの気持ちがわいてきた。

家族には距離を置かれてしまった。それでも幼なじみが「これからも支えていく」と法廷で証言してくれた。

検察官は、同じことを繰り返すと、次は常習累犯窃盗となり、法定刑の下限が3年以上となって、数百円の万引きでも重く処罰されることになるから、これを最後に治療につながってください、と戒めてくれた。

裁判官は、「お酒はおいしいと感じますか?」と質問し、「はじめはおいしく感じるが、途中からどうでも良くなっている。自分一人の力では、やめられないと思う。」と答えると、「そのことがわかっていることが重要。必ず治療につなげてください。支えてくれる人がいることを忘れずに。」と説諭された。

一定期間の服役は避けられないが、今度社会復帰するときには、速やかに治療につなげられるよう、弁護人としても連絡を取り続け、治療や自助グループの情報を提供し、繋いでいくつもりだ。

弁護士 迫田 学

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