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離婚~養育費の終期

Q 養育費の支払義務は通常20歳までとされるようですが。大学に進学した場合に22歳まで請求することができるでしょうか。

A 以下のとおり、事案により認められる場合があります。

詳しくは弁護士にご相談下さい。

1 養育費を支払うべき「未成熟子」の意義について

養育費とは、「未成熟子」が独立の社会人として成長自立するまでに要するすべての費用をいいます。

したがって、ここでいう「未成熟子」とは独立の社会人として成長自立したか否かで判断されるのであって、必ずしも未成年の概念と一致しません。

東京弁護士会法友会全期会家族法研究会編「離婚・離縁事件実務マニュアル改訂版」131頁にも、「未成熟子の範囲は、子の福祉の観点から、経済的に独立して自己の生活費を獲得することが期待的な段階にある子女か否かで定まるので、未成年者の範囲と一致しない。」とあります。

新版注釈民法(22)親族(2)151頁(甲4号証)にも、「養育費の支払い義務は、前述の生活保持義務を前提とすれば、子の年齢には直結せず未成熟の状態が終わった時ということになる。」とあります。

2 養育費の内容

養育費とは、未成熟子が独立の社会人として成長自立するまでに要するすべての費用をいうので、衣食住の費用、教育費、医療費、適度の娯楽費などすべてが含まれます。

このうち教育費については、進学のための予備校の費用や塾の費用、家庭教師代、受験料、入学金、授業料、教材代、クラブ活動費などが含まれます。

3 養育費の範囲の基準

未成熟子の扶養である養育費の本質は生活保持義務であり、扶養義務者である親が扶養権利者である子に自己のそれと同一の生活程度を保持すべき義務です。

そこで、具体的に養育費の範囲に含まれるかどうか争いがある場合には、その費用が親の生活水準と同等の生活水準を維持ずるために必要なものか否かで判断されることになります。

これは養育費の終期についても同様です。

4 養育費の終期

(1)教育的・経済的水準

したがって、両親の資力や学歴、生活レベルなど、教育的・経済的水準から、子に大学教育などの高等教育を受けさせることが親の生活水準と同等の生活水準を維持ずるために必要といえる場合には、子が大学を卒業するまでは社会的に独立していない未成熟子にあたり、成年以後に必要な生活費や授業料などの教育費を請求しうることになります。

(2)教育的・経済的水準以外の考慮要素~東京高等裁判所平成12年12月5日決定

さらに、東京高等裁判所平成12年12月5日決定では、大学在学中に成人した後の生活費や学費について、両親の資力や学歴、生活レベルなど教育的・経済的水準への言及はなく、それ以外の考慮されるべき事項を詳細に述べて審理不尽による差し戻しをしており、参考にされるべきでしょう。

「4年制の大学に進学し、20歳に達した後も、その大学の学業を続けようとする子が、20歳に達するまではその学費・生活費の一部を出捐していたが20歳に達した段階でその出捐を打ち切った父に対し、その学費・生活費について扶養を求めた事案である。

4年制大学への進学率が相当高い割合に達しており、かつ、大学における高等教育を受けたか否かが就職の類型的な差異につながっている現状においては、子が義務教育に続き高等学校、そして引き続いて4年制の大学に進学している場合、20歳に達した後も当該大学の学業を続けるため、その生活時間を優先的に勉学に充てることは必要であり、その結果、その学費・生活費に不足を生ずることがあり得るのはやむを得ないことというべきである。このような不足が現実に生じた場合、当該子が、卒業すべき年齢時まで、その不足する学費・生活費をどのように調達すべきかについては、その不足する額、不足するに至った経緯、受けることができる奨学金(給与金のみならず貸与金を含む。以下に同じ。)の種類、その金額、支給(貸与)の時期、方法等、いわゆるアルバイトによる収入の有無、見込み、その金額等、奨学団体以外からその学費の貸与を受ける可能性の有無、親の資力、親の当該子の4年制大学進学に関する意向その他の当該子の学業継続に関連する諸般の事情を考慮した上で、その調達の方法ひいては親からの扶養の要否を論ずるべきものであって、その子が成人に達し、かつ、健康であることの一事をもって直ちに、その子が要扶養状態にないと断定することは相当でない。」

5 判例

実際に大学の学費を認めた判例は、比較的高学歴・高収入世帯であるものの、次のとおりすでに昭和30~40年代から複数存在しています。

①東京高決昭和39年9月15日(家月13-9-53)

②大阪家決昭和47年12月13日(判タ219-197)

③福岡高決昭和47年2月10日(家月25-2-79)

以上

弁護士 吉武 みゆき

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