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DV被害を受けた場合の対処方法(証拠の集め方・シェルター・保護命令等)

【DVとは】

DV(ドメスティック・バイオレンス)とは、夫婦や恋人といった親密な関係にある人からの暴力をいいます。

暴力は、殴る、蹴るなどの身体的なものだけではなく、精神的なものや性的なものも含まれます。

例えば、以下のようなものです。

・身体的暴力 げんこつで殴る、足で蹴る、髪を引っ張る、首をしめる、腕をねじるなど

・精神的暴力 大声で怒鳴る、無視する、馬鹿にする、生活費を渡さない、交友関係を細かく監視する、外で働くことを禁止するなど

・性的暴力 嫌がっているのに性行為を強要する、避妊に協力しない、見たくないのにポルノビデオや雑誌をみせるなど

 

DVは、親密な関係にある人の間で行われるもので、密室でなされることが多く、そのため、反復継続し、深刻化する、発覚が困難、立証・訴追・処罰が難しいなどの特徴があるといわれています。

 

【DV被害を受けた場合の対処方法】

では、DV被害を受けた場合は、どのように対処したらよいでしょうか。

 

身の安全を確保する

前述しましたように、DVは、密室でなされることが多く、反復継続し、深刻化するなどの特徴があり、過去には重大な結果が生じたこともあります。

そこで、DV被害を受けた場合には、まずは身の安全確保を第一に考え、加害者と現在も同居していて、今後も暴力を受ける可能性があり、生命や身体に対する危険性が高いと考えられるようなときには、家から出て、避難しましょう。

 

〈シェルター(一時保護施設)について〉

DVの被害者が緊急一時的に避難するために、シェルター(一時保護施設)を利用する方法があります。

シェルターは、加害者から追跡されたり、所在を突き止められたりしないように、所在は公開されていませんので、安全を確保することができます。

シェルターに入りたい場合は、後に説明する配偶者暴力相談支援センターや警察などに、相談して下さい。

利用料は、公的な施設では不要ですし、民間団体によって運営されている民間シェルターでも、行政による一時保護委託として利用する場合には不要です。

シェルターへの入所は緊急の一時的なものですので、利用できるのは2週間程度です。その間に転居先を確保する必要がありますが、配偶者暴力相談支援センターは、住宅の確保に関する制度利用等について援助を行うことも業務の一つですので、同センターに相談することができます。

 

公的機関に相談する

〇配偶者暴力相談支援センター

配偶者暴力相談支援センターは、配偶者からの暴力の防止、被害者の保護のために、以下のような業務を行っており、婦人相談所や、福祉事務所、男女共同参画センター、女性センターなどが、その機能を担っています。

〈配偶者暴力相談支援センターの業務〉

・被害者の様々な問題についての相談対応や相談機関の紹介

・カウンセリング

・被害者などの緊急時における安全確保及び一時保護

・被害者の自立生活促進のため、就業促進、住宅確保などに関する制度利用等についての援助

・保護命令制度の利用についての援助

・シェルターなどの利用についての援助

 

福岡県内の配偶者暴力相談支援センターは、以下のサイトに掲載されているとおりです。

DV(配偶者等からの暴力)に関する相談窓口はこちら – 福岡県庁ホームページ (fukuoka.lg.jp)

 

〇警察

家庭内で行われた暴力であっても、その内容や程度によっては、傷害罪や暴行罪などの犯罪になります。過去には、警察は、「法は家庭に入らず」との法格言により、DVへの対応に消極的でしたが、現在では検挙等に積極的になっています。

そこで、殴る蹴る等の身体的暴力を受けて、生命身体に対する差し迫った危険があるときは、ただちに110番通報しましょう。

また、差し迫った危険がなくても、DVを受けて困っている場合には、警察署の生活安全課に相談しましょう。警察は、必要があれば、防犯ブザーを貸してくれたり、パトロールをしてくれたりします。

 

後に説明する保護命令の申し立てをする場合、事前に配偶者暴力相談支援センターや警察に相談などをしておけば、スムーズに行うことができます。そのためにも、それらの機関に相談することをお勧めします。

 

証拠を集める

保護命令申立てや離婚手続きでは、客観的な証拠が重要になってきます。時間が経てばなくなってしまうものや、家を出た後では確保することが難しいものもありますので、できれば早い段階から証拠を集めておきましょう。

〇医師の診断書

暴力を受けて怪我をしたら、治療のためにも、医療機関を受診しましょう。その際には、負傷の原因はDVであることを説明し、カルテに記載してもらいます。

〇写真

怪我の状況や壊された物を撮影した写真も証拠になります。いろいろな角度から複数枚、撮影するとよいでしょう。また、怪我の状況の写真については、誰のものかが分かるように、全身を写したものや、傷と顔が一枚に入るように写したものも必要です。

さらに、それらの写真を証拠として使うときに説明できるように、撮影者、撮影日、撮影場所や、負傷したり、物を壊されたりした日、そのときの状況などをメモしておきます。

〇録画、録音記録

精神的暴力などは、怪我などのように目に見える形では残りませんので、加害者が暴言を吐いたり、脅迫したりしている状況を録画、録音できれば、その記録は重要な証拠となります。

〇ライン、メール、手紙など

加害者から送られてきたライン、メール、手紙などに、例えば、脅迫的な内容や、暴力をした後、それを謝罪するような内容のことなどが記載されていれば、それらも重要な証拠となります。

また、被害者が、暴力を受けたことなどについて、加害者や第三者に送ったライン、メール、手紙なども、証拠となることもあります。

〇メモ、日記など

DVを受けた状況を記載したメモや日記なども、証拠となることがあります。

そこで、DVを受けた状況(いつ、どこで、誰が、何をした)や、DVに至る経緯、その後の経過などを、できるだけ詳細に、記憶が新しいうちに記載します。

 

保護命令の申し立てをする

保護命令とは、裁判所が、被害者の申立てにより、被害者の生命または身体に危害が加えられることを防止するために、加害者に対して命じる裁判です。

保護命令に違反した加害者には、刑罰(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)が科されます。

 

保護命令の申し立てができるのは、「身体に対する暴力または生命等に対する脅迫を受けた被害者」です。そのため、これらに当たらない心理的暴力や性的暴力のみの場合は該当しません。

保護命令の対象となる加害者は、「配偶者」(事実婚の場合を含みます。)と「生活の本拠を共にする交際相手」です。なお、離婚や交際関係の解消の前から、身体に対する暴力または生命等に対する脅迫を受けていた場合には、元配偶者や元交際相手も対象となります。

保護命令は、「加害者から身体に対する暴力を受けた被害者が、加害者からの更なる身体に対する暴力により、その生命または身体に重大な危害を受けるおそれが大きいとき」、または、「加害者から生命等に対する脅迫を受けた被害者が、加害者から受ける身体に対する暴力により、その生命または身体に重大な危害を受けるおそれが大きいとき」に発令されます。

 

保護命令の内容は、以下の5類型です。なお、②~④の保護命令は、単独で発せられるものではなく、①の保護命令に付随して発令されます。

①被害者への接近禁止命令

命令の効力が生じた日から6か月間、被害者の身辺につきまとい、または、その住居、勤務先などの付近をはいかいしてはならないことを命じるものです。

②被害者への電話等禁止命令

①の被害者への接近禁止命令の期間中、被害者に対して、面会の要求、行動を監視していると思わせるような事項を告げること、無言電話、午後10時から午前6時までの間の電話や電子メールの送信等(緊急やむを得ない場合を除きます。)、名誉や性的羞恥心を害する事項を告げることなどを禁止する保護命令です。

③被害者の同居の子への接近禁止命令

①の被害者への接近禁止命令の期間中、被害者と同居している未成年の子の身辺につきまとい、または、その住居、学校などの付近をはいかいしてはならないことを命じる保護命令です。

加害者が幼年の子を連れ戻すと疑うに足りる言動を行っていることなどから、被害者が同居している子に関して加害者と面会することを余儀なくされることを防止するため必要があるときに発令されます。なお、子が15歳以上であるときは、その同意がある場合に限ります。

④被害者の親族等への接近禁止命令

①の被害者への接近禁止命令の期間中、加害者に対して、被害者の親族などの身辺につきまとい、または、その住居、勤務先などの付近をはいかいしてはならないことを命ずる保護命令です。

加害者が被害者の親族などの住居に押し掛けて著しく粗野または乱暴な言動を行っていることなどから、被害者がその親族などに関して加害者と面会することを余儀なくされることを防止するため必要があるときに発令されます。なお、その親族などの同意がある場合に限ります。

⑤退去命令

命令の効力が生じた日から2か月間、被害者と共に生活の本拠としている住居から退去すること、およびその住居の付近をはいかいしてはならないことを命ずる保護命令です。

 

保護命令の申立てをする裁判所は、加害者の住所地や、被害者の住所、居所の所在地などを管轄する各地方裁判所のいずれかです。被害者の住所、居所の所在地を管轄する裁判所に申立てする方が被害者にとっては負担が軽いのですが、避難先を加害者に秘匿している場合は、注意が必要です。

 

申立書には、加害者からの身体に対する暴力または生命等に対する脅迫を受けた状況などのほかに、配偶者暴力相談支援センターの職員や警察職員に相談や援助等を求めた事実などを記載する必要があります(相談や援助等を求めた事実がなければ、加害者からの身体に対する暴力または生命等に対する脅迫を受けた状況などについて被害者の供述を記載し公証人の認証を受けた宣誓供述書を、添付する必要があります。)。

 

保護命令は、原則として加害者が立ち会うことができる審尋等の期日を経て発令され、加害者に対する決定書の送達または加害者が出頭した期日における言渡しによって効力を生じます。

なお、裁判所は、保護命令の申立てに係る事件は、速やかに裁判をするものとされています。

 

離婚手続きをする

離婚の方法としては協議離婚がありますが、DVを行うような加害者とは、対等に話し合いをすることは難しいと考えられますし、加害者が離婚に応じないことも考えられます。そのような場合には、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。

離婚調停の申立書の写しは、原則として相手方に送付されますので、避難先を加害者に隠しているような場合には、申立書の当事者欄の住所には、加害者と同居していた住所等、加害者に知られてもよい住所を記載します。また、調停期日では、加害者が待ち伏せしたり、尾行したりする危険もありますので、注意が必要です。この点、裁判所も、調停期日が終わった後、両当事者が裁判所から出る時間をずらすなど、一定の配慮をしてくれます。

次に、調停では離婚が成立しなかった場合、離婚訴訟を提起します。DVは、その内容や被害の程度、原因などにもよりますが、離婚請求を認める理由になりえます。

 

DVの問題についても、弁護士に依頼すれば、弁護士が被害者の窓口となって、加害者側との対応をしますし、保護命令の申立てや、離婚調停、離婚訴訟なども、円滑に進めることができると思います。

DVでお困りの方は、ぜひ一度、弁護士にご相談下さい。

以上

弁護士 上地 和久

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