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養育費をきちんともらいたい。養育費の計算の仕方。

1 養育費とは

養育費とは、未成熟な子が社会人として独立自活ができるまでに必要とされる費用のことをいい、生活に必要な経費、教育費、医療費などが含まれます。

夫婦の別居や離婚に伴い、その一方が未成熟な子を引き取って養育することになった場合、子を引き取った親(監護親)は、もう一方の親(非監護親)に対して、養育費を請求することができます。

この養育費の負担義務は、生活扶助義務(自分の生活を犠牲にしない程度で被扶養者の最低限の生活扶助を行う義務)ではなく、生活保持義務(自分の生活を保持するのと同程度の生活を被扶養者にも保持させる義務)であるとされています。

 

2 養育費支払いの方法と始期・終期

養育費は、一括払いではなく、毎月払いとされることが一般的です。

その支払いの始期は、原則として養育費を請求したときからとされています。そこで、離婚は成立したが、養育費について取決めがされておらず、養育費の支払を受けていないという場合には、早めに請求をした方がよいでしょう(なお、婚姻中は、養育費は婚姻費用に含まれていますので、別居しているけれども、離婚はまだ成立していないという場合は、婚姻費用の請求をすることになります。)。

終期については、子が成年に達する20歳までとされるのが一般的ですが、父母の学歴などの家庭環境、資力により個別に定めることができ、大学卒業までとすることもあります。なお、民法の改正により令和4年4月から成年年齢が18歳に引き下げられますが、養育費の支払期間に関しては、影響はないと考えられています。

 

3 養育費の決め方

⑴ 話し合いで決める

養育費が問題となるケースには、これから離婚するので、離婚後の養育費について決めるという場合や、すでに離婚しているが、離婚の際には養育費を決めていなかったので、今後の養育費の支払を求めるという場合などがありますが、どちらの場合にも、話し合いで決めることができます。

監護親と非監護親との話し合いにより、養育費の金額や支払期間、支払日、支払方法などについて合意ができた場合には、合意の内容を離婚協議書や合意書など書面にしましょう。さらに、公証役場で執行認諾文言付きの公正証書にしておくと、養育費が不払いになったときに、裁判手続を経ずに強制執行をすることができます。

⑵ 家庭裁判所の手続で決める

① これから離婚する場合

離婚することについて合意に至らないという場合や、離婚については合意できているが、離婚条件について合意に至らないという場合には、離婚調停や離婚訴訟で解決を図ることになりますが、それらの手続の中で養育費についても決められます。

② すでに離婚等している場合

養育費の支払を求める方が家庭裁判所に調停の申し立てをして、調停手続の中で話し合いがされます。そして、当事者間で合意が成立すれば、その内容が調書に記載されて、調停成立となります。

一方、調停で話し合いがまとまらない場合は、審判手続に移行し、裁判所が養育費について決定します。

 

4 養育費の算定方法

養育費等の算定について、家庭裁判所等の実務では、標準算定方式・算定表が定着しています。

養育費等の算定表(令和元年版)は、以下のとおりです。

平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について | 裁判所 (courts.go.jp)

 

5 養育費の履行確保

⑴ 履行勧告、履行命令

義務者が養育費の支払いを怠ったとき、養育費の支払いが調停、審判や人事訴訟の判決・和解で決まった場合には、家庭裁判所に、履行勧告、履行命令の申出をすることができます。

履行勧告は、義務者が履行遅滞している場合に、家庭裁判所が、権利者からの申出により、義務の履行状況を調査した上で、その履行を勧告するものです。申出の方式に制限はなく、口頭や電話でも申出をすることができます。ただし、義務者が勧告に従わない場合のペナルティは定められていませんので、心理的な効果を与えるにすぎません。

履行命令は、金銭の支払その他財産上の給付を目的とする債務につき義務者が履行遅滞している場合に、家庭裁判所が、権利者からの申立により、相当の期限を定めて、その義務の履行をなすべきことを命じるものです。義務者が履行命令に違反した場合、10万円以下の過料に処せられるとされています。

⑵ 強制執行

養育費の支払いが、調停、審判や人事訴訟の判決・和解で決まった場合のほか、話し合いによる合意の内容を執行認諾付き公正証書にしていた場合には、強制執行をすることもできます。

強制執行のうち直接強制は、義務者の財産を差し押さえて、その財産の中から支払を受けるための手続です。義務者の財産は、給料、預貯金、不動産などが考えられます。

なお、平成15年の民事執行法の改正によって、養育費等の支払の不履行が一部でもあれば、期限が到来していない部分についても一括して強制執行を申し立てることができるようになりました。この場合、差押えの対象は給料等の継続的給付に係る債権に限定されます。

また、給料を差し押さえる場合、通常は、原則として4分の1に相当する部分までですが、養育費等については、2分の1に相当する部分までできることとなりました。

さらに、令和2年4月施行の民事執行法の改正によって、養育費等の場合は、市区町村や日本年金機構等に対して、義務者の勤務先などの情報の提供を求めることができることとなりました。

 

6 養育費は子どもの生活や成長のために重要なものです。

養育費について、心配なことや、困ったことがありましたら、ぜひ弁護士にご相談下さい。

 

弁護士 上地 和久

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