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同一労働同一賃金の原則シリーズ 2/2

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3 差別的取り扱いの禁止

もっとも、そもそもパートタイム・有期雇用労働者法は、全ての不利な[1]待遇について、通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取り扱いを禁止しています(パートタイム・有期雇用労働法9条)。

そこで、まず「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」にあたるかどうか、ひいては法9条の他の要件を満たすかを検討し、満たさない場合に初めて前記法8条の個別の待遇ごとの不合理な待遇の相違にあたるかを検討することになります。

以下が法9条の要件・効果です。

(1)「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」の意義

ここで、「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」とは、以下の①②の要件を満たす者を言います。

①通常の労働者と職務の内容(業務の内容とそれに伴う責任の程度)が通常の労働者と同一であること。

②当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において職務の内容及び配置の変更の範囲(人事異動等の有無と範囲)が通常の労働者と同一であること。

(2)「差別的取扱い」として禁止される対象事項

「差別的取扱い」として禁止される対象事項は、「基本給、賞与、その他の待遇」です。

「その他の待遇」には、諸手当、退職金等の賃金のみならず、教育訓練、福利厚生、休暇、安全衛生、災害補償、解雇などすべての待遇に及ぶとされています。

(3)本条違反の効果

本条に違反する事業主の行為は、不法行為として損害賠償請求(民法709条)の対象となります。また、本条違反の労働契約の定めは、本条の強行法規性から、無効となります(民90条)。

(4)判例

本条(改正前は8条)に関する判例としては、ニヤクコーポレーション事件判決(大分地方裁判所平成25年12月10日判決)があります。

この判決では、1日の所定労働時間が1時間短い準社員(貨物自動車運転手)について、正社員と職務内容が同一で、人事異動等の有無についても実情を勘案すると同一のものと見込まれると判断されて、賞与額、週休日の日数ひいては休日の割増賃金部分、退職金の有無についての待遇差を「差別的取扱い」であると認定し、不法行為による損害賠償請求が認められました。

4 派遣労働

いわゆる「働き方改革関連法」により、労働者派遣法においても、不合理な待遇の禁止や、事業主による待遇差の説明義務について、「パート・有期雇用労働法」と同様の改正がありました[2]

但し、労働者派遣の場合には、待遇比較の対象は派遣先の正社員であり、説明義務を履行するのは派遣元事業主であることに注意が必要です。

以上

<参考文献>

「詳解労働法」(第2版)水町勇一郎教授

「同一労働同一賃金ガイドライン」(平成30年12月28日厚生労働省告示第430号)

『「同一労働同一賃金ガイドライン」の概要』(厚生労働省HP)

[1] 短時間・有期労働者の福祉の増進を図ろうとしている本法の趣旨(法1条)や、有利な待遇の場合の合理性に鑑みて、有利な待遇については本条の「差別的取扱い」に該当しないと解されている。

[2] パート・有期雇用労働法と異なり企業規模による施行時期の違いはない。

弁護士 吉武 みゆき

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