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まさかの対象外?!残業規制に関する例外をご紹介します。

使用者は、法律で決められた時間以上に働かせた場合には割増賃金(残業代)を支払わなければなりません。

しかし、この規制は全ての方に適用されるわけではなく、以下のような例外があります。

 

1 業種や地位に関する例外

以下の方は、残業規制の対象外とされています。

これらの方には、深夜労働を除き、残業代を支払う必要がありません。

  • 農業(林業は除く)、畜産業、水産業の方
  • 管理監督者又は機密事務を取り扱う者
  • 監視又は断続的労働に従事し、使用者が行政庁の許可を得たもの

この中で特に問題になることが多いのは、②です。

②にあてはまるか否かは、役職名にかかわらず、次のような要素から総合的に判断するとされています。

a:経営に関する決定に参加し、労務管理の指揮監督権限を認められていること

b:自己の労働時間(出退勤含む)につき、裁量があること

c:地位と権限にふさわしい待遇(基本給、手当、賞与など)

たとえ企業が「管理者」「監督者」だと主張しても、a~cを考慮して②には当てはまらない場合には、残業代を支払う必要が生じます。

 

2 変形労働制

ある特定の時期に忙しさが集中する職種の場合、週単位、月単位、年単位それぞれで労働時間を変形する(1日8時間を超えても残業にならない)ことが認められています。

ただし、会社がこれらの制度を利用するためには、労使協定、就業規則などであらかじめ所定労働時間を特定する、特に年単位の場合には労基署への対象者の範囲や繁忙期などを記載して届け出るなど、手続要件をクリアしなければなりません。他方、労働者が残業代を請求したい場合には、変形労働制の手続要件をクリアしているかを事前チェックする必要があります。

 

3 固定残業制(みなし労働時間制)

残業代をあらかじめ仮計算して、給与の一部として毎月固定で支払う制度です。実際の残業時間が短く、残業代が仮計算より低くなる場合でも固定額が支払われるため、労働者にはメリットがあります。また、厳密な残業代の計算が不要になる点で、会社側にもメリットがあります。そのため、近年導入する会社が増えてきています。

裁判所は、固定残業制につき、法律上の根拠はないものの、合理的な範囲であれば有効であると認めています。ただし、次の点には注意が必要です。

 

  • 実際の残業時間が長く、残業代が仮計算(固定残業代)より高くなる場合

会社は、固定残業代で不足する分について、追加で残業代を支払う義務があります。残業規制は強力なため、固定残業制によって無効にはできません。

 

  • 基本給と固定残業代の区別がない場合

会社側が「固定残業代は基本給に含まれている」と主張しても、客観的に基本給と固定残業代が区別できない場合には、固定残業代と認められないことがあります。

また、労働者が固定残業代だと認識できないような「営業手当」「成果給」「職務手当」などの名称・性質では、固定残業代とは認められないとした裁判例もあります。

 

  • 基本給と固定残業代のバランスが行き過ぎている場合

基本給等を通常では考えられない水準まで低く設定していたり、逆に固定残業代をあまりに高額に設定したりする場合、原則通り計算すると、長時間労働をしても追加の残業代が一切発生しないことになります。

しかし本来、固定残業代は、通常発生する残業代を便宜的に仮計算する例外的な扱いですし、基本給に比べて固定残業代が著しく高いということは、毎月何十時間も残業させることを会社が当然の前提としているという意味であり、過労死等を誘発する危険に繋がりかねません。よって、このような規定は残業規制を逸脱して無効であると判断される可能性があります。

以上

弁護士 石井 衆介

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