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労働者の採用をめぐる諸問題

1 労働契約の成立

労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて合意することで成立します(労働契約法6条)。

但し、契約締結においては、①労働契約の期間、②就業場所、③始業・終業時刻、④休憩・休日に関する事項、⑤賃金の決定方法、⑥退職に関する事項等を書面によって明示することが義務付けられています(労働基準法15条2項)。

なお、求人票や募集広告では、見込み賃金が明示されることがあります。これらは当然に労働契約の内容として確定するものではないと考えられていますが、契約締結時に特段異論が述べられなかった場合等は雇用契約含まれると考える裁判例(大阪高判H2.3.8)や、誠実な説明を行わなかった会社へ慰謝料を認める裁判例(東京高判H12.4.19)もあります。

 

2 採用内定

労働契約の成立前、「将来的に雇い入れたい」旨の意思を示すことがあります。一般に「内定」、「内々定」などと呼ばれるものです。これらは労働契約の締結前であるため、取り消すのも会社側の自由とも思えます。

ところが、中には具体的な契約申込みや見習い期間が設定されているもの、他の会社の内定を断らせるなど拘束力の強いもの等もあり、「内定」に対する期待の強さによっては、「解約権就きの労働契約(将来何らかの事情により解約される可能性がある労働契約)」とみなされることがあります。この場合には、会社からの理由なき一方的な内定取消しは許されず、解約したい具体的な理由の中身が争われることとなります。

 

3 試用期間

多くの会社では、採用後の一定期間を「試用期間」「見習い期間」等と定め、正規従業員としての適格性(人柄、能力等)を評価する制度をとっています。この期間で問題があると判断された場合には、本採用を拒否することができるとされています。たとえば、過去の裁判例では、勤務成績不良、労働能力の欠如、協調性の欠如、経歴詐称などが問題になってきました。

しかし、試用期間であっても、労働契約は成立していますので、自由な判断は許されず、「(本採用を拒否する)客観的に合理的な理由」が存在することが必要です。一般に、「内定」の場合よりは厳しく、正規従業員の「解雇」の場合よりは柔軟に判断するといわれますが、個別具体的な事情によって結論が変わるため判断が難しいところです。

 

弁護士 石井 衆介