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旧優生保護法違憲国賠訴訟大阪高裁判決について

1 旧優生保護法と優生手術

 1948年に成立・施行された旧優生保護法は,優生上の見地から不良な子孫の出生を防止することを目的の一つとしていました。そして,一定の要件の下,特定の疾患に罹っている者に対し,強制的に優生手術(不妊手術)を行うことが認められていました。その後も,数回の法改正により,手術対象者の範囲を拡大し,遺伝性を問わず,精神病精神薄弱者についても,保護義務者の同意で手術を行うことが認められるようになりました。
1949年から旧優生保護法が施工されていた1996年までの間に,確認されているだけで約2万5000件の優生手術が実施され,その中の約1万6500件の手術には本人の同意がありませんでした。また,優生手術が認められる対象者に対する,約5万9000件の人工妊娠中絶手術も実施されました。

2 立ち上がった被害者たち

 2018年1月以降,優生手術を受けた原告らが,国に対して賠償を求める訴訟を全国各地で提起しています。これまでに,仙台,東京,大阪,札幌,神戸の地方裁判所で原告側敗訴の判決が出されていました(令和4年2月22日時点)。大阪地裁も,不法行為を受けた後に賠償請求できる期限である20年(「除斥期間」といいます。)を過ぎていることを理由に,原告らの請求を棄却していました。

3 画期的な判断を示した大阪高裁

 そのような状況において,令和4年2月22日に大阪高等裁判所が非常に画期的な判断を示しました。
大阪高裁は,大阪地裁の判決を取り消し,原告らの請求を認容する判断を示しました。大阪高裁は,「特定の障害がある人などを一律に『不良』であると断定すること自体,非人道的で,個人の尊重という憲法の基本理念に照らし容認できない。子を産み育てるかどうか意思決定する自由を侵害し,明らかな憲法違反」であると認定しました。さらに,「国が障害者に対する差別・偏見を正当化し,助長してきたとみられ,原告は訴訟を起こすための情報や相談機会へのアクセスが著しく困難な環境にあった。除斥期間の適用をそのまま認めることは著しく正義・公平の理念に反する」として,除斥期間の適用を制限し,被害から20年以上経過しているにもかかわらず,原告らの請求を認めました。

4 今後の流れ

 各地の弁護団が連携し,国に対して上告を取りやめるよう働きかけを行っています。この大阪高裁判決を確定させた上で,さらに,全ての被害者を救済するための立法を,国会に対して求めていくことになります。また,大阪高裁判決は,各地で係属中の他の訴訟の大きな後押しとなることは間違いありません。
私も,福岡地裁に係属している旧優生保護法違憲国家賠償請求訴訟に原告代理人の一人として参加していますが,大阪高裁判決は福岡訴訟にとっても大きな後押しとなります。福岡訴訟の次回期日は,令和3月24日(木)14時~となっております(@福岡地方裁判所)。期日後の報告集会なども行いますので,お時間のある方はぜひ参加されてください。

以 上

弁護士 上野 直生

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