相続法が変わります!~その4:持戻し免除の推定~
「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」が平成30年7月6日に成立し、同月13日に公布されました。そこで、相続分野で変更された主な点について、これからシリーズでご紹介していきます。
第4回目のテーマは、「持戻し免除の推定」です。
<「持戻し免除」って何?>
ある方の生前に、財産の贈与等を受けていた場合、相続財産を前もって受け取っていたものと扱い、遺産分割の際に受け取れる財産を減少させることになります(これを「特別受益」といいます。)。
しかし、被相続人は、相続人との関係性や死後の相続人の生活の安定などを考えて、「特別受益と扱わなくて良い。」と決めることができ、その場合には、上記のように受け取れる財産が減少することはありません。これを、「持戻し免除」といいます。一般的に、近親者への贈与や不動産の名義変更などの事例で、用いられることが多い方法です。
<改正の趣旨は?>
今回の法改正では、①婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、②居住用の不動産を贈与等した場合、被相続人が他の配偶者に対して、持戻し免除の意思を表示したものと推定することになりました。
20年以上連れ添った夫婦の間では、夫婦生活に関する長年の貢献に報いる必要があるほか、老後の生活を安定させるために不動産を贈与等したことが推測されることから、このような法改正がなされるに至りました。
<法改正による影響は?>
上記要件にあてはまり、「持戻し免除」が認められる場合、不動産の贈与等を受けたとしても、遺産分割の際に受け取れる相続財産が減少することはありません。
但し、この規定はあくまで「推定」ですので、被相続人が異なる意思(=配偶者に「持戻し免除」を認めない意思)を表示していた場合には適用されない点には注意が必要です。
なお、この法改正については、令和元年7月1日以降にされた贈与等に適用されますので、それ以前の贈与等には遡りません。
<疑問やお悩みがあれば、専門家へご相談を>
ご自身の具体的な相続分がいくらになるのかという点は、遺産分割協議を進める上で重要な情報だと思います。疑問やお悩みがおありの方は、一度専門家へご相談されてはいかがでしょうか。