遺産の評価方法
1 はじめに
遺産分割を行うにあたっては,亡くなった方の遺産の範囲を確定すると共に,その遺産の評価額を確定する必要があります。遺産は預貯金,株式,不動産など様々な種類の財産から構成されることが通常で,これを公平に分配する前提として,遺産の経済価値を評価する必要が生じるのです。
以下,遺産分割の場面において,典型的な財産=預貯金,不動産についてどのような評価がなされるかを説明します。
2 預貯金について
預貯金については,その預貯金口座の残高で評価します。
細かい話となりますが,亡くなった時から遺産分割の時までに残高が変動している場合は,原則として「遺産分割時」の残高で評価することになっています。その上で,変動が生じた原因によっては,一定の調整を行う場合もあります。
3 不動産について
難しいのは,不動産の評価方法です。不動産についてはいくつかの評価方法があり,どの評価方法をとるかによって評価額が大きく異なることも多いため,紛争の原因となりやすいところでもあります。
実務上は,例えば「固定資産税評価額」で評価するという方法があります。固定資産税評価額とは,各自治体が行う財産評価に基づく金額であり,これに基づき固定資産税が課税されています。固定資産税評価額は自治体による一つの公的な基準ということができますが,特に都市部においては固定資産税評価額が時価よりも大幅に低いことがよくあるため,実態と乖離した金額となる場合があります。
また,「相続税評価額」で評価する方法もあります。これは,財産評価基本通達に従い計算した評価額であり,相続税の申告もこの相続税評価額に基づいて行われます。相続税評価額は,地域によって,路線価図に基づき算定する場合と,前述の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて算定する場合があります。
不動産の評価額については,これらの公的基準をベースに話合いをすることが多いですが,どうしても相続人間で話合いがまとまらない場合は,裁判所の選任する利害関係のない鑑定人が不動産鑑定を行うことになります。ただ,鑑定費用が高額になるため,実務上は鑑定前に話し合いで決着しているケースも多いと思われます。
以 上