離婚に伴う財産分与について(後編)
離婚は一つの人生の節目です。人生のリスタートを切るためにも結婚中に得た財産からきちんと応分のものを得ておく必要があります。それが財産分与です。財産分与の基礎知識を前後編に分けてご紹介します。今回は後編です。
4 評価基準時と分与の割合
夫婦が婚姻中に協力して形成・維持してきた共同財産について,いつの時点の金額や評価額を基準に,どのような割合で分けるのかという問題があります。
⑴ 財産評価の基準時
共同財産の評価方法については、法律上は特段の決まりはありません。したがって、より客観的で合理的と考えられる方法で判定されることになります。
預貯金や保険などは、夫婦の協力関係が終了する別居時を基準時として評価すべきですが、不動産や株式等については時価の変動は夫婦の協力とは無関係であるため離婚成立時の時価と評価すべきであると筆者は考えます。
⑵ 分与の割合
法律上、当事者双方がその協力によって得た財産の額、その他一切の事情を考慮して、分与の額や方法も決めることとされています(民法768条3項)。実務では、夫婦の財産形成に対する寄与度を原則として2分の1としたうえで、個別事情を考慮して修正するという方法をとっています。
したがって、専業主婦であるからといって2分の1を大きく下回る分与しか認められないというものではなく、原則として2分の1の請求を行ってかまいません。
5 退職金の取り扱い
退職金は、賃金の後払的な性格が強いことから、夫婦が婚姻中に協力して形成した財産といえます。したがって、すでに退職し、支払い済みの退職金は分与対象となります。
これに対し、将来受領する予定の退職金については、将来支給されることが確実な場合であることを前提に、仮に離婚時点で自己都合退職をすれば支給されるであろう退職金額を基礎に分与方法を検討するのが実務一般の取り扱いです。
6 負債の取り扱い
財産分与が婚姻中の財産関係の清算という側面を持つことから、裁判例においても、夫婦共同財産に資産と債務(負債)がある場合には積極財産の総額から消極財産を差し引いた残額を基礎に判断するのが一般的です。
したがって、例えば夫が住宅ローンの名義人となっている場合には、ローン残高(消極財産)も考慮したうえで預金等(積極財産)を妻より多めに取得することで分与額を調整するという方法がとられます。
7 相手方の財産が不明の場合
相手方が預貯金を隠していると、事実上分与請求が困難となります。
調停や裁判で、家庭裁判所を介して調査することも可能ですが(調査嘱託手続)、限界があります。そのため、離婚を考える場合は、同居中から相手方名義の通帳や金融機関からの通知書、年末に届く控除証明書のコピーを取っておくなど、財産の把握に努める必要があります。具体的な方策については、弁護士へのご相談をおすすめします。