成年年齢の引き下げで変わること
2022年4月1日から市民生活の基本法である民法の改正により成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。
1 契約年齢について
(1)18歳からは親の同意がなくても自分で契約ができるようになります。
例えば、携帯電話の契約もできますし、クレジットカード契約も自分でできます。一人暮らしのアパートを借りる契約も自分でできます。
(2)もっとも、自分で契約ができるということは、反面では未成年者取消(未成年者であることだけを理由に契約を取り消す方法)ができなくなることを意味します。
例えば、消費者トラブルにあった場合に、以前は未成年者の契約であるという理由だけで契約を取り消すことができていましたが、今後はそのような理由だけでは取消ができなくなります。
若者は、契約や交渉において他者から自分自身を守る能力を身につけている途上であり、言葉巧みな勧誘や威圧的勧誘により契約をしてしまうおそれがおあります。また、友人や先輩後輩などの人間関係の影響や、SNS上の多くの情報に左右されやすいおそれもあります。
このような特徴から、若者は事業者にターゲットにされやすく、実際にも、現在の成年年齢である20歳を境に消費者被害が統計上急増しています。
具体的には以下のような消費者被害がおきています。
①キャッチセールス(町で呼び止められて、事業所に行って不要な契約をしてしまう)
②アポイントメントサービス(『あなたが当選しました』等の連絡があり、営業所に呼ばれて高額な商品を購入してしまう)
③マルチ商法(友人を販売組織に勧誘すればお金が貰えるといわれて友人に販売組織の商品を紹介して入会を勧誘してしまう)
④エステ等の美容サービスや医療サービス(安いサービスを受けられるといわれてお試しで行ったら高額なコースを言葉巧みに勧誘されて契約してしまう)
⑤インターネットでの商品購入(送料だけのお試し購入だと思って契約したのに、2回目以降も継続して商品が送付され、一定期間契約が解約できない定期契約だった)
⑥タレント・モデル商法(街中でのスカウトを契機にレッスン料を支払ったら連絡がとれなくなった)
また、若者はお金がないことが多く、高額の契約のためにクレジットやローンを組まされて多額の借金を負担してしまうことも珍しくありません。
このような消費者トラブルになった場合でも、以前は未成年者であるという証明だけで従来は契約を取り消すことができていました。
しかし、今後は、クーリングオフをしたり(書面通知要件や、原則短期の期間制限あり)、詐欺取消(民法)や不実告知を理由とした取消(消費者契約法)をしたり(経緯立証の負担は被害者側)しなければならなくなりました。
2 親権の対象年齢について
18歳からは親の親権に服さないことになります。
そこで、18歳からは、住む場所や進学先や就職先を自分で決めることができるようになります。
3 但し、公営ギャンブルや喫煙・飲酒の年齢制限は、ギャンブル依存症対策や健康被害の防止の観点から、これまでどおり20歳以上です。
4 ちなみに、女性の婚姻可能年齢も16歳から18歳に引き上げられました。
5 養育費の支払終期
法改正前は、養育費の支払終期は一般に成年年齢である20歳までとされていたことから、今後は18歳となるのではないかということが問題となります。
しかし、養育費支払義務は経済的に自立できない未成熟子の養育にかかる費用負担の問題です。例えば、法改正前でも、高校卒業後大学に進学した場合には、卒業する22歳まで支払義務があるとされる場合が通例でした。
法改正後も、20歳までは経済的に自立しておらず未成熟であることが多い現状はかわりません。
今後も引き続き養育費の支払終期は20歳までと取り決められることが多いのではないかと予想されます。
なお、法改正前に「成人に達するまで」という取り決めをしていた場合には、改正前の成年年齢である20歳までという趣旨だと解釈されると考えられます。
以上
<参考文献等>
・政府広報オンライン
・「狙われる18歳!?~消費者被害から身を守る18のQ&A」(岩波ブックレット№1043/日本弁護士連合会消費者対策委員会)