確定給付型企業年金、確定拠出年金の財産分与
1 はじめに
最近、個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)に加入している方も増えているのではないでしょうか。離婚にあたってiDeCo含め、年金の分割がどうなるのかについて説明したいと思います。
2 厚生年金、共済年金の年金分割
厚生年金、共済年金については年金分割制度ができたため制度として分割されるようになりました。年金分割についてはこちら(https://kd-lo.gr.jp/law-column/2004/)もご覧ください。ただ、年金分割では国民年金分は分割されませんので自営業等で国民年金しか加入していない方は年金分割の対象となりませんのでご注意ください。
3 確定給付企業年金の財産分与
企業が退職金の代わりに「確定給付型企業年金」に拠出する場合があります。確定給付企業年金は支給さえる額が確定している点で次の「確定拠出年金」と異なります。名前が似ているので分かりにくいですね。
確定給付企業年金は原則企業が掛け金を全額負担します。給付は年金(または一時金)として支給されますが、仮に定年前に退職した場合は脱退一時金として支給されます。
年金としての支給でも一時金としての支給でも、実質は退職金と同類と見ることができますので財産分与の対象になります。
具体的には基準時点(多くの場合、別居時点)の脱退一時金について、婚姻期間に応じて計算します。
例えば、脱退一時金が500万円、勤務年数は25年ですが婚姻期間は10年の場合を考えると、500万円×10年/25年=200万円が財産分与の対象財産となります。これを財産分与の際に1/2にします。
4 確定拠出年金の財産分与
「確定拠出年金」は最終的な支給額が運用実績によるため支給額が確定していません。支給額が確定していない点が「確定給付企業年金」と違いになります。
また、掛け金を企業が支出する場合もありますし、個人が自己の支出で加入する場合もあります。個人で加入する場合が個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)ですね。
企業が掛け金を掛ける確定拠出年金は退職金と同じと見ることができますので財産分与の対象になります。個人が掛けた個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)も個人資産ですので財産分与の対象です。
計算方法は基準時点(多くの場合、別居時点)の資産残高(評価額)について、婚姻期間に応じて計算します。これは確定給付型企業年金と同じです。
5 企業年金分割の場合の難点
確定給付企業年金、確定拠出年金は退職するまで又は60歳になるまで原則脱退できないようになっています。そのため、計算上、財産分与ができるといっても現金が手元にあるわけではありませんので、財産分与の原資をどうやって用意するか(又は用意してもらうか)が課題になることが多いです。幸いにも他に財産がある場合はその中で調整しますが、他に財産がない場合は将来受け取る際に分与する約束をすることもあります。
6 最後に
通常の厚生年金、共済年金だけでなく、企業年金等も財産分与の対象になりますので、財産分与の際には注意しましょう。
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