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佐賀空港自衛隊駐屯地建設工事差止裁判の報告

1 仮処分を提起しました!

2023年8月29日、佐賀地方裁判所に佐賀空港自衛隊駐屯地建設工事差止仮処分の申し立てをしました。債権者は駐屯地建設予定地の共有持分権者である漁業者(元漁業者を含む。)4名、債務者は国です。

申立ての1カ月前には、これまで、佐賀地域での運動に取り組んでこられた「佐賀空港への自衛隊オスプレイ等配備反対地域住民の会」などが呼び掛けて、「オスプレイ裁判へのキックオフ集会」が開催され、佐賀県内外から400名の方が詰めかけました。その場で「佐賀空港オスプレイ等配備に反対する裁判を支援し、地権者とともにたたかう市民の会」(略称「オスプレイ裁判支援市民の会」)が設立され、共産党から団員弁護士の仁比聰平参議院議員、立憲民主党から原口一博衆議院議員などによる連帯のあいさつもありました。

2 佐賀空港への自衛隊配備の動きについて

2014年7月、国は佐賀県及び佐賀市に対し、佐賀空港への自衛隊配備(目(め)達(た)原(ばる)駐屯地所属ヘリコプター50機の移駐と陸自オスプレイ17機などの配備)を要請しました。しかし、この要請にしたがうことは、これまでの佐賀空港(現在の正式名称は「九州佐賀国際空港」)の民間空港としての利用と全く異なる事態を招来するものです。

佐賀空港の建設計画は、1964年に始まりましたが、産業誘致・近代化等の建設推進のうたい文句の反面、漁業環境の悪化や生活環境の悪化等の懸念があり、漁業者をはじめ地元住民の激しい反対闘争がありました。

結果として、1989年に着工、1998年に開港となりましたが、建設同意の際に、当時の地元の8漁協は佐賀県との間で公害防止協定を締結しました。その覚書付属資料の中で、県は「自衛隊との共用はしない」と明記しました。これは、当時戦争体験者である漁協の指導者らの「自衛隊が使う=軍用空港となるのであれば攻撃目標になる。それは絶対に許されない」という思いが結実したものでした。その平和への思いは、長年引き継がれ、2010年の米軍普天間飛行場の佐賀空港への移設に反対する県議会や佐賀市議会決議でも上記公害防止協定の精神を根拠としていました。

ところが、昨年11月にその公害防止協定を佐賀県有明海漁協が見直し、かつ、本年5月には自衛隊駐屯地建設予定地の地権者(254名)の団体とされる「国造搦(こくぞうがらみ)60ha管理運営協議会」が全員合意ではなく3分の2以上の賛成の決議で売却を決定し、国と漁協との間で売買契約を締結してしまいました。

佐賀空港に隣接した自衛隊基地の建設は、隣県・長崎県佐世保に配備されている「水陸機動団」(日本版「海兵隊」)を搬送する役割を持つことからも分かるとおり、反撃能力の保有までいわれる今日において、南西諸島防衛・台湾有事も見越した強い攻撃性を有する軍用空港化そのものです。自衛隊と米軍との一体化が進む現在、「米軍は常駐しない」と言っても日米共同訓練で米軍が利用することは必至です。

そのため、この問題は、漁業者・地権者だけでなく、広く佐賀平野(筑紫平野)及びその周辺住民の生活にも多大な影響を及ぼす問題です。平和を願う日本中の人々の問題でもあります。地権者の方々は、①平和への思い(軍事的緊張のなか攻撃目標にされる危険が高まる、オスプレイの危険や公害等)、②諫早干拓で傷つけられた有明海及び筑後川周辺流域の漁業環境のさらなる悪化の防止(排水対策問題や持続可能な漁業の確保)、③平和を基礎とする佐賀の生活環境の確保(バルーンが飛ぶ空、ラムサール条約湿地に登録された東よか干潟、子どもの育つ環境等)の思いで行動し、裁判に立ち上がりました。

3 仮処分事件の概要

土地の売却に反対する地権者らがその有する土地所有権に基づき、また、人格権(基地建設による被害)に基づき、国を債務者として自衛隊基地の建設差止めを求めています。

すでに10月13日に債務者審尋、同月20日に債権者審尋がそれぞれ実施されました(双方出席での第1回審尋期日の調整がつかなかったため。)。今後、11月22日、12月20日の期日が予定されていますが、工事現場までの道路を毎日のように工事用のトラックが多数通行しており、現地では急速に工事が進められています。そのため、年内には、本案訴訟の提起も検討しています。

佐賀空港に隣接する駐屯地建設予定地は、元は国による農地造成目的の干拓で作られた土地でした。この干拓事業を開始する際に、漁業者らは、希望者への農地の配分を約束され、その合意に基づいて漁業者らが土地を共同で取得した、というのが所有権(共有持分)主張の根拠です。その後、空港建設のために国から土地の払い下げを受けた佐賀県は、漁協との間で売買契約を締結し、その旨の登記もされているという形式的な点をとらえて、国は漁業者らの所有権(共有持分)を否定しています。

類例のない所有権に基づく駐屯地建設差止めという裁判に勝利し、軍拡の動きにくさびを打ち込みたいと思います。ぜひ「オスプレイ裁判支援市民の会」にも多くの方々の参加・寄付をよろしくお願いいたします(末尾QRコードから!)。

4 全国で進む自衛隊基地建設、強化への動きに対抗するために

九州全体を戦場とするつもりであるかのように、九州各県で自衛隊基地建設、強化が強行されています(長崎の水陸起動団配備、鹿児島の馬毛島基地建設、福岡の築城基地強化)。大分でも新たに長射程ミサイルの配備が可能な弾薬庫の整備が進められており、これに対して、市民団体が新たに結成され、反対運動を進めています。

全国で進む自衛隊基地建設、強化への動きに対抗するために、各地の運動を結集させて大きな反対運動にまとめ上げていくことも必要です。団員の先生方には、各地でのそのような動きを発信していただければ幸いです。

以上

弁護士 池上 遊

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